映画の後半で出てきた単語帳からわかるように、みんなに好かれたいがために全員にいい顔をしていたわけですが。
それは、つまりみんなに好かれる自分を演じ、誰とでも関わることで自分を守ろうとする生き方です。
積極的に他人に迎合することで遥は他人の欲に生きることになり、結局「本当の自分」を失っていました。
なぜ能力が弱まった?
なぜその能力が使えるようになった?
なぜ能力が弱まったのかを考えるにあたって、そもそもなぜその能力が使えていたのかを考えます。
それは、他人から逃げるため、ですね。すなわちそれは、美鈴にとっての処世術だったわけです。
他人と関わることを嫌っていた美鈴。
雑多な社会から逃げることができるというこの能力は、何とか社会を生きていくためになくてはならないものでした。
なぜ小林のために能力を使ったのか
しかし映画の後半、とんでもない変化が現れます。それは、少し仲良くなっていた小林のために能力を使うということです。
漫画家志望であるという小林をバカにする男子が許せず、時間をとめるのです。
しかも、遥が他の誰かと2人にならない代わりに、遥以外の人のために時間をとめる能力を使わないという約束をしていたのにも関わらず、です。
これは大きな美鈴の心情の変化といえるでしょう。
美鈴以外の誰かのために時間をとめるということは、美鈴と遥の2人にとって、時間をとめるためのフラグ(条件)を満たしていないのです。
よって、その能力がどんどん弱まっていったと考えられます。
なぜ美鈴はみんなの前で全てを告白したのか
2人の秘密を捨てる
遥の家で遥の単語帳を発見し、遥の本当の姿がわからなくなっていた美鈴。
ある日、能力が弱まっていた美鈴は遥と2人で机の上に立っているときに時間が動き出してしまいます。
そこで、美鈴は今までしてきたことを告白するのです。そして2人が付き合っていることも。
それは、もう時間をとめるという行為、すなわち「2人の秘密」を捨ててしまうという行為でした。
遥を放っておけなかった
2人の秘密を捨てた理由。それは、遥を救うためだと思います。
他者に好かれようとして自分を見失ってしまった遥、いつまでも冷めたような表情を見せる遥に本当の姿を取り戻してもらうため。
秘密の時間を捨てたからこそ、遥は怒号をあげて教室から出ていくわけです。
フラグタイムの本当の意味
美鈴にとって時間が止まるということ
さあ、いよいよ本質に差し迫ってきました。では考えます。美鈴にとって時間が止まるということが指す意味は何だったのでしょう。
それは上で述べたように、社会から逃げることで自分を守るということです。
自分を守るための時間だったのです。
遥にとっての時間が止まるということ
一方、遥にとってそれはどんな意味を持っていたのでしょう。それは、同じ意味であると考えます。
遙もまた、社会から離れる時間を欲していました。
これは、「遥が演じていた遥」ではなく、仮面の中の遥本人です。