引き上げられたエンゾは治療を拒み、そのまま海に沈むことを願うのです。

頼まれたジャックは一度拒みますが、結局はエンゾを連れて深い海へと潜っていきます。

もしもエンゾが負けず嫌いというだけで潜っていたなら、このような願いは抱かなかったでしょう。

可能性は低くとも復帰のために身体を癒し、鍛え、今度こそジャックの記録を越えようとするのではないでしょうか。

エンゾは最期にジャックの見ている景色を共有し、海の底へと消えていったのです。

海へ還ったジャック

止められない渇望

エンゾを葬った際、ジャックもまた事故を起こしてしまいます。

引き上げられたジャックも一命をとりとめますが、エンゾを失ったショックで呆然としていました。

エンゾを失ってしまい、もう自分を真に理解してくれる人間がいないことへの絶望だったのかもしれません。

病床のジャックは強烈な海のイメージにうなされます。

それはさながら禁断症状のようでした。ジャックにとって海に潜らないということは、息ができないほどの苦痛だったのでしょう。

ジョアンナの望む「人間社会での生活」ができないことが、最後まで明示されます。

ジャックはジョアンナの制止を振り切ってでも海に帰ろうとするのです。

「Go and see my love」


海へと帰ろうとするジャックにジョアンナは次の言葉をかけ、海へと消えていくジャックを送り出しました。

「Go and see my love」

引用元:グラン・ブルー/配給会社:20世紀フォックス

字幕での意味は「行って、私の愛を見てきて」となっています。

愛した人を2度と戻れない海へと送り出したジョアンナの言葉の真意は何だったのでしょうか。

「私の愛」を「私の愛する人」という意味だと解釈する人もいます。

この場合の愛とはジャック本人でしょう。

しかし、「私の愛」というそのままの意味だとしたら、ジョアンナの真意は「ジャックの望む通りの海へ帰す自分の愛」のことではないでしょうか。

ジョアンナは入院などの方法で、ジャックを無理やり陸に拘束することもできたはずです。

そうしなかったのは、海を居場所としイルカを家族というありのままのジャックを、ジョアンナは愛したからではないでしょうか。

まとめ:2人の結末の意味

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エンゾとジャックという2人の主人公が、2人とも深い海へと消えていくという衝撃の結末で終わった「グラン・ブルー」。

そこに込められた意味とは何だったのでしょうか。

この映画が公開された80年代には、「自然回帰」運動が先進国を中心に盛んになっていました。

この映画では、人間社会での治療で生き延びられたかもしれないエンゾとジャックは、自分の望み通りそのまま海へと還っていきます。

技術の進歩で伝統的な価値観から自由になった反面として孤独を強めた人にとって、この映画の結末は自然回帰の究極として支持を集めたのかもしれません。

2人の行動を通して、社会的な規範に縛られずありのままの自分を貫き通すことは悪いことではない。

そんなメッセージを感じさせる映画になっているのです。

この考察を知ったうえで改めて作品を観てみると、きっと彼らの人生の意義が見えてくるかもしれません。

 

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