そしてこの2人の関係こそが、エンゾとジャックそれぞれの結末への布石となるのです。

ジャックとジョアンナ

2人の気持ちのすれ違い

さて、ジャックにとってエンゾが「海へのこだわりの理解者」だとするなら、ジョアンナは「普通の人間社会とのつながりの象徴」といえます。

ジョアンナは、ずっと海に潜るかイルカと戯れるかの二択のジャックを海から人間社会へとつなぎとめるように奔走するのです。

ジャックは潜水士の父の元に生まれました。

父は潜水中に事故死し、母親も亡くなっているため、ジャックは天涯孤独の身です。

そんなジャックがジョアンナに「家族の写真」として見せたのは、両親ではなくイルカの写真でした。

ジャックにとって「家族」とは、人間ではなくイルカだったのです。

このことがジョアンナの不安や、ジャックの最期にも関わってくることになります。

ジャックの海への情熱や執念は、「海の中から上がってくる理由がみつからない」という想いに込められているのでしょう。

ジャックにとっての居場所とは海の中で、家族はイルカなのです。

ジョアンナの望み

ジョアンナは、海へとこだわるジャックに理解を示しつつも次第に安定した暮らしを求め始めます。

そんな2人のすれ違いは、一夜を共にした後にジョアンナが起きると、ジャックは海でイルカと戯れていたというシーンに象徴されます。

その後ジョアンナはジャックとの子供を妊娠し、そのことを2度ジャックに告げますが、ジャックはジョアンナを省みませんでした。

夫婦と子供という理想的な人間社会の生活よりも、ジャックは海にいたがったのです。

エンゾ最期のダイビング

エンゾとジャックは互いに友情を育みながらも新記録を樹立しあいます。

しかし、ジャックの潜水記録はジャック自身の恵まれた身体能力ゆえであり、常人が挑戦するには危険な記録になってしまいました。

ついに医師の勧告によって大会そのものが中止となります。

しかし、エンゾは勝手にダイビングを強行するのです。

案の定彼の身体は耐えられず、引き上げられたときにはすでに瀕死の状態になってしまいました。

なぜ、エンゾは医師によって危険と警告され、死ぬかもしれないとわかっていて潜ってしまったのでしょうか。

エンゾが危険を犯してまで潜った理由とは

考えられる2つの理由

1つは、エンゾの負けず嫌いの性格でしょう。

ジャックとの間に明確な身体能力の差があったのにも関わらず強行したのは、無謀というしかありません。

しかし、エンゾは不戦敗を許せないというだけで無謀な挑戦をしてしまうような、短慮なだけのキャラクターでしょうか。

2つ目の理由として、エンゾとジャックは「フリーダイビングで見る景色」でつながっている親友であることが挙げられます。

これは、ジャックと同じ景色を見続けたかったから、という考察です。

もしも医師の勧告に従ってそれ以上の深さに潜ることを止めてしまえば、もうジャックと同じ景色を見ることはできなくなります。

エンゾは、そのことに耐えられなかったのではないでしょうか。

エンゾの最期の願い

この2つ目の理由であれば、エンゾの最期の願いもよくわかります。