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2008年8月からWeb上で公開された6作品に追加シーンを加え、完全版として公開されたイヴの時間 劇場版。
制作を担当した「スタジオ・リッカ」の代表も務める吉浦康裕が監督を務めたこの作品。
近未来の「たぶん日本」を舞台とし、人間とそれに従うアンドロイドのドラマを描いたアニメーション作品です。
また公開後、キックスターターによるクラウドファウンディングにより制作資金を獲得。
英語吹替版や多言語字幕版が作られたことでも知られています。
劇中では高校生である向坂リクオと真崎マサカズ、そして人間とアンドロイドの区別をしないという謎めいた喫茶店「イヴの時間」。
そこを中心にさまざまな伏線の提示と回収を繰り返し、優し気なストーリーラインとともに観るものに上質な時間を提供してくれるでしょう。
ここではこの「イヴの時間」を上質たらしめる、劇中で散りばめられた数々の伏線や設定について解説します。
アンドロイド倫理委員会の秘密とは
劇中でたびたび印象的なコマーシャルを打ち出すアンドロイド倫理委員会。
そこでは真崎マサカズの父・真崎アツロウがCIO(最高情報責任者)として勤務しています。
このアンドロイド倫理委員会、テレビコマーシャルなどのメディア戦略を考えても、かなりの資金力を持つことは間違いありません。
ここでは、真崎アツロウがテレビ戦略部の企画として「ズームインスクランブル」というおそらくワイドショー番組に出演。
しかし、そこでの肩書は「倫理委員会広報官」となっています。
メディア戦略としてはCIOとして出演したほうがよさそうなものですが…。
つまり、少なくとも真崎アツロウが対外的にCIOとしてふるまうことに、何らかの問題があることは間違いありません。
あえて広報官を名乗ることで敵対組織から自身の身を護るなどの思惑が考えられます。
倫理委員会の母体が引き起こした「トキサカ事件」
そしてこのアンドロイド倫理委員会はかつての母体組織が「トキサカ事件」と呼ばれる重大事件を引き起こしたことが語られています。
劇中で多くは語られませんが、少なくとも対ロボット警棒で誤って当時5歳の少女を意識不明の重体にさせ当時の代表は辞任。
その被害者の名前は「アキコ」らしき人物であることが読み取れます。
アキコは嘘をついている?
「アキコ」とは劇中で出てくるアンドロイド、アキコと同じ名前。
トキサカ事件が起こったのは十数年前とされていますから、アキコが人間であれば年齢的にも符号しておかしくない年頃です。
しかし、当然ながら劇中のアキコはアンドロイド。もしこの少女がアキコ本人であるなら、人間のアキコもいるはず。
これは、「イブの時間」に訪れるアキコがアンドロイドを騙っていて、人間とアンドロイドのアキコが二人いる可能性を示唆しています。
襲撃されたアキコの正体はナギ?
「トキサカ事件」で襲撃された少女の名前は上記の通りアキコ。
しかし、よく見るとその写真はナギに酷似しています。そのため、ナギはこの少女が成長した姿かもせれません。
またエピローグでは、ナギの手に何らかの機械的肉体補助装置で稼働する潮月の手と同様の装置がうっすらと垣間見えます。
以上から、「トキサカ事件」で重体となったアキコがナギとして潮月の養女となり、その後「イヴの時間」に参画したとも考えられるでしょう。
しかし、これではアキコがナギと名乗ったいわくを説明できません。
それを説明するには、アキコを死亡したと発表し潮月が引き取った…。
あるいはアキコは死亡しておりその亡骸を再利用してナギを再構成した、なども推測されます。
潮月の身体に機械的補助がされている理由も説明されていないことから、潮月の肉体を使ってナギの身体を再構成したことも考えうるでしょう。