そもそも「イブの時間」は潮月の息子たち…AIプログラム「code:LIFE」が施されたアンドロイドが無意識的に集まる場所。
であるのならば、この時間軸で潮月がリクオたちにサミィを紹介するのは納得がいきます。
つまり、潮月が何らかの劣情を芦森に覚えており、サミィの記憶を改ざんすることによってその悪意を無意識的に芦森に向けさせていたら…。
とするといかにも幼稚というか、セコい行動原理に感じますが、すべての黒幕が潮月であるという可能性は否定できません。
サミィにまつわる超次元的な謎
サミィの「怖い夢」の最後にはサミィに手を差し伸べる潮月の姿が映し出されます。それは、救いの手とも恐怖とも受け取れるイメージ…。
少なくとも芦森の手から離れたサミィに、潮月はなんらかの方法で彼女を保護下に置いています。
その後、サミィがイヴの時間に現れるまで芦森の目から逃れていたことからもそれは確実でしょう。
であれば不良品であるはずのサミィがどんないきさつがあるにせよ、リクオ宅で稼働している説明がつきます。
ただし、この「怖い夢」は明らかに前後の時間軸があやふやです。
しかも、未来に現れるはずのキャラクター(小説版に登場する、リクオのピアノコンクールに出演したアンドロイド)さえも登場しています。
サミィが会ったことが無いカトランの記憶を共有する描写もあることから、彼女にはもっと超次元的な機能が備えられているのかもしれません。
「code:1138」の意味とは?
ロボット三原則を無効化しうる特殊プログラムだった?
劇冒頭から巨大スクリーンにも映し出され紹介される「code:1138」。
劇中では、潮月の手によるロボット三原則、あるいはロボット法の一部に優位性を与え、無効化するプログラムとのこと。
サミィの記憶やカトランによると「イブの時間」の看板からそのプログラムの発行がされていることが確認できます。
そもそも、「イヴの時間」でアンドロイドがリングを消すこと自体、人間の命令を無視しているのですから本来はできないはず。
しかも、「イブの時間」に集まったアンドロイドたちはナギのお願いを無視することすらあります。
これらはこの「code:1138」によるものと考えられるでしょう。
「code:1138」は単なる阻害プログラムではない?
この「code:1138」の発信源を、瀬戸口の探索もあり芦森たちはいち早く感知しています。
が、芦森たちはそれを一種の実験サンプルと考えているのか、あるいは潮月の足取りを追うためなのか、特に干渉する様子は見せません。
そして劇中で、サミィは「イヴの時間」に通うことである種の人格的成長を遂げていることが示唆されます。
つまり、「code:1138」は単なる阻害プログラムでなく、アンドロイドの成長そのものを促すプロジェクトなのかもしれません。
「イヴの時間」は何のために作られた店なのか
エピローグの描写では、「イヴの時間」は過去にも存在していました。
そこではナギらしき女性と牧場らしきサイロのある風景の元、アンドロイドたちがティータイムを楽しむ様子が描かれています。
それは悲劇的な結末を迎えたようですが、かつて作られた同様の場所がすべて「イヴの時間」だとするならば、3か所か4か所。
さらに、エピローグではその「イヴの時間」についてアンドロイドたちが幸せにくらせるように願いが込められていると示唆されています。
また、“EVE”とはクリスマスイブの「イブ」。つまり前夜祭の意味。
そして、たびたび表題としてとしても登場する“Are you enjoying the time of EVE?”の一文。
これは、人間とアンドロイドが幸せに共生する時間。その前夜祭であり、一種のモラトリアム期間でもある今、その不完全すら楽しんでほしい。
そんなやさしい願いが込められているようにも思えます。