そこがきっと中島哲也監督の狙いなのでしょう。
この映画はいい意味で“斬新”なのです。
登場人物が多くてわけがわからなくなる、という点もこの映画を衝撃的に見せ、面白くする一つの長所だといえます。
衝撃を煽るような音楽
瀬岡が加奈子に誘われ、パーティーに行くシーンがありますが、ここで効果的な音楽が使われています。
でんぱ組.incの「でんでんぱっしょん」がこのシーンでは用いられていますが、加奈子達が薬物をやってハイになっている様子に音楽が上手くリンクされています。
加奈子や遠藤、長野、松永は薬物でテンションも高めになっている様子です。
そしてこれから瀬岡に起こる悲劇を「でんでんぱっしょん」の独特な歌の雰囲気が煽っています。
勘のいい方なら「これから瀬岡に何か起こるのではないか?」と気付いた方もいるのではないでしょうか?
そしてもう一つ印象的なシーンとして、加奈子の死体を探す藤島と、加奈子を殺して埋めた東が車中で会話をするシーンがあります。
ここでは松田聖子の「Sweet Memories」がラジオから流れていました。
“死体を探す”という行動とあえて真逆の甘いメロディーの音楽を流す事で、この映画の異常な雰囲気をさらに狂わせているのです。
音楽が、この映画の狂気じみた世界をさらに色づけ、観ている人に強い衝撃を与える役割を担っています。
コンビニ強盗事件の真相
コンビニで男女三人が残忍な手口で殺される事件が冒頭で発生しますが、この真相はずばり“売春組織の写真担当だった小山を殺す為”です。
売春組織の常連に政治家や警察関係者が関わっていた為、小山が生きている事は関わりのある不良グループや暴力団組織にとって不都合だったといえます。
そして残りの二人は事件には無関係のように描かれていますが、何らかの形で関わっていた事も考えられます。
加奈子が不良グループや暴力団組織を裏切って、買春の証拠である写真を権力者達に送りつけたのが事の始めなのです。
事件の鍵を握っている加奈子が見つからない為、とりあえず不良グループの一味であり、写真担当の小山を殺害した、というのが事件の真相です。
そして第一発見者を昔、刑事であった藤島にしたのもこれは偶然ではなく必然であったのです。
加奈子の父親である藤島を巻き込む事で、不良グループや暴力団組織は全ての秘密を握る加奈子の居場所を突き当てたかったといえます。
そしてそれは警察にも同じ事がいえるのです。
妻夫木聡演じる浅井が藤島をしつこく追いかけるのは上からの命令なのでしょう。
加奈子の居場所を知りたいと同時に、真実に辿り着こうとする藤島の存在は邪魔でしかなかったのです。
加奈子の目的と素顔
映画内で不思議な、掴みどころのない人物として描かれる藤島の娘、加奈子。
加奈子の目的とは一体何だったのでしょう?そしてその素顔とは?