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「魂のゆくえ」(2017年公開)は監督のポール・シュレイダーが50年間温めた構想を映像化した、人生の集大成作品と称しています。
舞台はニューヨークにある250年の歴史がある小さな教会「ファースト・リフォームド教会」を中心に狭い範囲で物語は展開します。
教会の牧師エルンスト・トラー牧師は代々従軍牧師の家系であったことから、息子を戦地へ送り出し戦死させてしまい心に深い傷を負いました。
「魂のゆくえ」を観るポイント
「魂のゆくえ」をなんの予備知識もなく見始めると、多くの人の頭の中には「疑問」が残るかもしれません。
また、一度観てよく理解できなかった場合は以下の3点をポイントにして観ると、少し理解の幅が広がると思います。
- 監督の魂のゆくえ
- 信仰者が抱える苦悩
- 環境問題と宗教理念
監督の魂の解放的映画
シュレイダー監督は戒律の厳しいプロテスタントのカルヴィン派の家庭で育ち、18歳まで自由に映画を観ることができませんでした。
神の言葉(福音)を厳守する生活から自由を得るという観点でみると、当作品が監督が長年向き合ってきた魂の解放という見方もできます。
ちなみにシュレイダー監督の妻は女優のメアリー・ベス・ハートで、この映画に出てくるヒロインの名前メアリーと同じです。
信仰者が抱える苦悩
トラー牧師は聖書の教えを人々に説いていく立場です。生活の中に宗教理念をあてはめながら生きるので、息子の死とその意味に葛藤するのです。
トラーは妊娠している子供を堕胎するよう環境活動家の夫から言われるメアリーの相談をうけ、牧師の立場で夫に命の尊さを諭しました。
しかしトラー牧師は息子を戦場に送り死なせてしまったのですから、自らの教義に矛盾を感じてしまったことが容易にわかります。
環境問題と宗教理念
トラー牧師のように聖職者という立場で環境問題を考えた時に、教義的な論点で様々な考え方や捉え方ができます。
キリスト教で言うならば母なる地球をキリストの子である人が破滅へ向かわせる「環境破壊」という構図になるのです。
メアリーの夫マイケルはやがて滅びゆく地上に我が子を産み落とす罪に悩み、トラーは命の重さを明解に諭せず苦悩するのです。
環境問題と生命の尊厳
メアリーの夫マイケルは環境保護団体「グリーンプラネット」の活動家でカナダで抗議活動中に逮捕釈放されたのちに活動自粛をしていました。
地球に及ぼす環境破壊の影響を数値で追うあまり絶望感を抱き、過激な抗議方法を駆使しようと企てていたようです。
敬虔なクリスチャンだったメアリーはそんな夫とお腹の子を心配し、日曜学校でトラー牧師に相談をもちかけたのです。
マイケルの心の闇
トラー牧師の教えなければならない立場も理解できるし、壊れゆくとわかっていて新しい命を世に出す迷うマイケルの気持ちもわかります。