原作漫画が発表された1980年代は、著しく技術が発達する中での戦争、自然全破壊、公害などさまざまな問題に揺らいだ時代です。
しかし、現代はその時代よりもさらに遺伝子操作技術をはじめとする人間の技術が進歩し続けています。
そのため「人工物」である王蟲(オーム)を登場させることで現代社会への警鐘を鳴らしているとも見受けられるのです。
巨神兵
巨神兵は、映画と漫画原作ともに奇妙で混沌に満ちた悍ましい力を秘めた「破滅」の象徴として強烈なインパクトを与える存在です。
こちらでは、このような恐ろしいキャラクターに込められたメッセージについて迫ってみましょう。
巨神兵の設定
巨神兵は、「火の七日間」とよばれる最終戦争で世界を焼き尽くした存在として描かれています。
原作漫画では、知性が高く自分の意志に基づいて行動する存在とされていることに加えて神の様に「調停」と「裁定」を担うことが描かれています。
ですが、実は「人工生命体」であるという複雑かつ重みのある背景をもつキャラクターです。
映画ではごくわずかにしか登場しませんが、その悍ましい姿と力は強烈なインパクトを与えています。
巨神兵の存在自体が戦争の原因に
作品中では、生存している最後の1体の巨神兵の存在自体が戦争の原因にもなっている様子が描かれています。
これは、対象は違っても現代社会においても共通する問題を訴えているように見受けられるでしょう。
本作品で宮崎駿監督が伝えたい真意
【風の谷のナウシカ】は作品の公開から30年以上も経過していますが、現在も世界中で愛され続ける作品です。
その理由としては、宮崎駿監督が社会に訴えたい強いメッセージが【風の谷のナウシカ】に秘められていることが関係しています。
作品に込められたメッセージ
そのメッセージとは、損得の感情が先行する社会に生きる人間が忘れかけている「命」の尊さや「生かされている」という事実、人に限らず自然との共存も可能にできる「愛」について「今一度考えるべき」であるということです。
時間が経過しても変わらぬ説得力
自然環境が破壊され続けた結果として発生した異常気象により毎年多くの人が亡くなります。
また、国ごとの貧富の差は広がり続け憎しみを高めて争いごとやテロなどの事件も絶えない社会において宮崎駿監督のメッセージは揺るぎのない説得力をもち続けています。
作品の公開から30年以上も経過した現在もその決してメッセージは色あせることなく、より鮮明なものになっていると断言しても過言ではないでしょう。
原作漫画と比較しながら鑑賞してみよう!
こちらでは所々で【風の谷のナウシカ】の映画と原作漫画と異なる点についてご紹介してきましたが、その相違点を1つひとつ挙げれば限りがないほどあります。
キャラクターの設定やストーリーの展開、エンディングもそれぞれ異なるため映画と原作漫画は「異なる2つの作品」と捉えてもよいほどです。