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嫌われ松子の一生(ネタばれ) ダメな男ばかりを選んだ理由を考察!松子は何のために変顔をする?妹の「おかえり」の意味とは

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B000HRMEYG-22/cinema-notes-22

どこまで男運がわるいのか。

映画「嫌われ松子の一生」では、ダメな男たちとの愛に破れ、裏切られ、破滅の人生へと転落していく悲しい松子の物語が描かれています。

この映画は第7回日本アカデミー賞で監督賞を獲得。

中島哲也監督の厳しい指導のもと、体当たり演技を披露した主演の中谷美紀さんも高い評価を得ました。

どうしてダメ男たちばかりを選んでしまったのか?

松子の幼少期からの生きざまや心理、奇異な行動の数々から考察すると、彼女の心には深い闇に閉ざされた悲しい現実が見えてくるのです。

たとえダメ男でも愛されたいと思う松子の心理と行動


教師をクビになった後、松子の前にはさまざまなダメ男たちが現れます。

彼らと松子の愛の遍歴を追いながら松子の性格や癖を浮き彫りにして、なぜ松子はダメ男たちを選んでしまうのか考えてみましょう。

異常なまでに愛されることに貪欲な松子

松子の行動には、男たちから愛されたいという異常なまでに強い欲求が根底にあるようです。

むやみに相手を信じ込んだり暴力を振るわれても自分に非があると考えるのも、心からの愛を渇望するがゆえの松子の思いなのでしょう。

松子には、常に受け身で相手の顔をうかがう癖があります。

相手が話を切り出すのを待って、相手の表情を見て愛されているかどうかを探るのです。

言われたことを素直に聞いて忠実に行動するので、男から見ればいいなりになる都合の良い女になります。

松子は、相手から愛を求める依存体質になっていたのです。

言われた言葉をそのまま信じ込む

松子は人の言うことをそのまま言葉通りに信じてしまいます

罵倒されれば自分に非があると思い込み、必死に男の要求に応えようとするのです。

不倫相手との別れの際にセックスが良かったと言われてソープ嬢としてのテクニックに自信を持つ場面もありました。

妄信的な松子の姿には、見方を変えればすぐ人に騙される危うい面があるのです。

松子は精神障害なのか

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結果的に騙され、裏切られることになったヒモ男との関係は最悪の悲劇を生むことになります。

稼いだ金を他の女に貢がれたとわかった時、松子は突然憤激し残酷な殺人を犯してしまうのです。

衝動的に殺害する異常とも思える行動は、自閉症や発達障害などの精神障害の症状ではないでしょうか。

精神を病んでいると思われる行動は他にもありました。

教師をクビになるきっかけとなった窃盗事件の時、自分が罪をかぶってその場を収めようとします。

突然自分からパニックになって、あわてて思いがけない行動にでる姿も精神障害を思わせます。

松子は抜群の美貌とスタイルの持ち主だった

松子がダメ男を引き寄せてしまうのは、その美貌と抜群のスタイルにも要因があるでしょう。

教師時代には同僚の教師を夢中にさせ、不倫相手からは親友の作家が松子と同棲(どうせい)していることに嫉妬されます。

松子は男をひきつける魅力的なルックスを持ち合わせていたのです。

ルックスの良さを自覚しているからこそ、肉体関係を持てば気持ちは後からついてくるとの短絡的な考えがもあったのでしょう。

それが不倫相手との関係や、理容師との愛などに見え隠れします。

ルックスが良くて簡単に身体を許す松子は、まるで金のかからない娼婦のようです。

なぜ?変顔をする松子には過去に悲しいトラウマがあった

松子の貪欲に愛を求める行為や発達障害とも思える衝動的な行動は、幼少期の孤独な毎日や家族との関係が原因だったようです。

父親との確執、妹との関係から松子の過去を洗い出して、転落の人生の原因を考えてみました。

どうして妹だけを愛するの?家族の愛を求めた幼少期

松子の父親は、妹が大病を患ってしまってから笑わなくなります。

妹の身体のことだけを気にかけている父や母の姿は、妹ばかりで自分には目もくれない冷たい態度に感じたのでしょう。

いいようのない孤独感は、幼い松子には耐えられなかったのだと思います。

後になって父親の日記から、いつも松子を気にかけていた事実を知るのですが、まだまだ先の話です。

頻繁に出てくる川辺で1人で歌う場面。明るく歌う松子の姿は寂しい孤独感の裏返しのように感じます。

両方の靴をきちんとそろえるシーンは「私はきちんとしているよ、お行儀よくしているよ」と訴えているようです。

幼少期に愛情に飢えている自覚しか持たなかった松子は、その後の人生でもひたすら相手の愛を欲しがるようになったと考えられます。

父親を笑わせたい一途な思い

父親との唯一の楽しい思い出は、妹の見舞いの帰りに一緒に観劇をしたことです。

松子は笑わなくなった父親の前で、ひょっとこのように唇を尖らせ目を寄せた変顔を繰り返します。

「何とか笑ってほしい」自分の存在を気にかけてもらいたい必死の行動だったのでしょう。

何度目かの変顔で父親が笑ったことから、幼い松子は何度も同じ顔をして父親を喜ばせようとします。

松子にとって数少ない成功体験のひとつ。

これが癖になって、松子は成長してからも追い込まれたときに変顔になってしまうのです。

妹への愛と嫉妬の葛藤で精神を病む

嫌われ松子の一生

妹は、姉・松子を慕っていました。松子も妹を愛していたと思われます。

松子の中では、妹への愛と両親を取られた嫉妬の感情が、同時に沸き起こってくるのを整理できなかったのでしょう。

妹への愛と嫉妬

思春期を迎えたころ、嫉妬から妹を罵倒し家出をしてしまいます。

必死に止める妹。

自分が家族に愛されないのは「あんた(妹)のせいだ」松子の中で妹への愛と嫉妬が葛藤し心の許容範囲を超えたのです。

そしてこれが皮肉にも妹との最期の会話になりました。

松子は、幼少期の孤独感からくるトラウマと思春期における精神の葛藤から、発達障害のような衝動的な行動に走るようになったと考えられます。

男たちとの遍歴を繰り広げる原因のひとつではないでしょうか。

松子は必死に相手の愛を探る

家族の愛情に気づかなかった松子の幼少期の経験は、大人になってからの人間関係に影響します。

最初に交際相手や同僚の気持ちを探るのです。

自分からは思いを告げず相手の気持ちを確かめてから対応する受け身の姿勢になっていきます。

相手の顔色をうかがい自分がどう思われているのか確かめる松子。

愛を渇望するあまりに、いつしか依存体質になっていったと考えられます。

愛されていることを確信した松子の狂信的な愛情

狂信的だってくらい音楽に溺れさせてよ

やくざ者になってしまった教え子との愛は、いつも相手に依存していた松子が、自らの考えを押し通して行動した数少ない機会でした。

相手の愛を確信した時の松子は、身も心も尽くします。たとえそこが地獄でも一緒にいたい。

松子は、孤独がなによりも怖かったのです。

あまりに激しい松子の愛情はやがて男の重荷になっていくのですが、この狂信的な欲求はどこから生まれるのでしょうか。

幼少期から一貫して松子の恐怖は孤独であることでした。

父親から愛されていないと感じた時は、何とかして、父親の気持ちを自分に向かせようと懸命に変顔になりました。

男に対しても同じなのです。

どうしようもないダメ男とわかっていても、ひとりになりたくない気持ちがあふれて、関係をつないでおきたいと必死になります。

いつも誰かに愛されていたい感情は、幼少期のトラウマともいえるでしょう。

松子は愛を追い求め、愛されていると確信した瞬間から、相手を離したくないと狂ったような振る舞いや行動に出るのです。

「ただいま」と「おかえり」はひとりではない証拠

物語の中に何度か出てくる「おかえり」というセリフは、松子の心境をひも解くキーワードだと考えられます。

ひとりじゃないことを端的に表現しているのでしょう。

人とのつながりの基本形「おかえり」と「ただいま」

松子にとって、「ただいま」と「おかえり」はひとりではないことを証明する手段だったと考えられます。

松子は妹にいつも「おかえり」と言われていたことを、妹が亡くなった後に気が付くのです。

「お姉ちゃんは一人じゃないよ、私がいるよ」

妹が一番の松子の理解者だったのかもしれません。

幸せを感じる天国への階段

Stairway-heaven-天国の階段-ORIGINALCOVER-NIYARI計画

最後の最後に、妹からの「おかえり」が本当に松子の気持ちを癒やすことになりました。

天国への階段を上る松子の表情には安堵(あんど)と幸せが感じ取れます。

松子を天国で迎える妹の「おかえり」は、お姉ちゃんやっと幸せになれたねと言っているようです。

「ただいま」と呼応する松子。家族のつながり、人とのつながりをずっと求め続けた松子が解放される瞬間でした。

なぜ松子はダメ男ばかり引き寄せてしまったのか

嫌われ松子の音楽-メイキング・オブ

タイトルの「嫌われ松子の一生」は言い方を変えると、だれからも嫌われたくない松子の物語といえないでしょうか。

男たちから見れば、松子は持って生まれた美貌と愛されたいがためにどんな男の言葉も安易に信じ尽くし続ける都合の良い女です。

そんな松子には幼少期からのトラウマから過剰に愛を求める悲しい性があったのです。