大きな喧嘩をしたことでツチダはますます不安を募らせています。
せいいちが果物の入ったダンボール箱を持ち帰ったときにはこんなことを言っていました。
「ねぇ、何考えてるの?」
引用:南瓜とマヨネーズ/配給会社:S・D・P
まさに先述したコミュニケーション不全の状態ですね。
その後、せいいちは三つのアルバイトを掛け持ちするようになります。ツチダの不安が最高潮に達していたことはいうまでもありません。
ハギオとの再会は、不安を埋め合わせるためにタイミングが良かったと考えられるのです。
せいいちと別れて不安そのものがなくなると不安を埋め合わせる必要もなくなりました。
むしろそのときはじめて、ツチダはハギオへの気持ちがその程度のものだと気づいたのかもしれません。
カナコからのアドバイス
2つ目の理由が「カナコからのアドバイス」です。カナコはツチダに対してせいいちとハギオの両方と分かれることを勧めました。
「どっちか選んだら選ばなかった方にいつまでも情が残るから それいちばん嫌でしょ?」
引用:南瓜とマヨネーズ/配給会社:S・D・P
せいいちと別れたあともツチダの中にその言葉が残っていたのでしょう。
せいいちへの情を断ち切るためにハギオに別れを切り出したのだと考えられます。
二人のその後は?
ラストシーンでせいいちとツチダは明け方の道を別々の方向に歩いていきます。
映画はそこで終わってしまいますが、二人の関係は一体どうなっていくのでしょうか。ここでは気になる二人のその後について考察しましょう。
明るい兆し
先述したとおりせいいちの『ヒゲちゃん』からは、ツチダとの新しい関係性を築いていこうとする心境が見て取れます。
さらにラストシーンでは、バンドメンバーから少し離れて歩く二人が印象的でした。ツチダはせいいちに対してこんなふうに聞いています。
「また会える?」
引用:南瓜とマヨネーズ/配給会社:S・D・P
その言葉に対してもせいいちはツチダをライブに誘うなど積極的にアプローチしています。
このことからも二人の関係がポジティブな方向に進んでいくことは間違いなさそうです。
原作との微妙な違い
しかし映画はそこで終わり、二人のその後が描かれることはありませんでした。
ちなみに原作では二人が元鞘に戻ったであろうことがかなり明確に示唆されています。
つまり本作ではあえて二人のその後を描かず、むしろ意図的に別々の道へと進んでいくラストシーンにしたといえるのです。
この演出にはどのような意味があるのでしょうか。その答えは映画のテーマを考えることで見えきます。
本作のテーマとは?
本作のテーマは「依存的な関係からの自立」です。ツチダは愛人になってまでせいいちを金銭的に支えていました。
そうまでして、せいいちとの関係や今の暮らしを守りたかったのです。ツチダの心情はこんなセリフにも現れています。
「私たちにはお互いしかいない」
引用:南瓜とマヨネーズ/配給会社:S・D・P
せいいちも最初のうちは、不本意ながらもツチダについつい甘えていました。
元のバンドメンバーに馬鹿にされても楽器を売るという短絡的な行動をとるのが精一杯。
「お金の心配しなくていいって」
引用:南瓜とマヨネーズ/配給会社:S・D・P
そう言われて働きもせずスランプからも抜け出せず悶々とした日々を過ごしていたのです。
しかしツチダの「仕事」を知ったことをきっかけに、とうとうアルバイトをはじめました。すると次第に音楽もいい方向へと向かっていきます。
せいいちは依存関係を抜け出すことで、自立する力を獲得したのです。そして自立したうえで、ツチダとの新しい関係を築こうとしました。
一方のツチダもせいいちと別れた後、今度はハギオに依存することができたはずです。しかしその道を選ばず別れを切り出しました。
ツチダもまた依存関係の連鎖から逃れて自立していくことを選んだのではないでしょうか。
二人が別々の道を歩いていくラストシーンが意味するもの。それは「依存的な関係からの自立」というテーマを強調するための演出だったのです。