サンタクロースを信じていない淳之介が憧れの「万年筆」をプレゼントしてもらい感激していた笑顔には胸を打たれ感動的でした。
その演出は竜之介の考えたシナリオで、ヒロミと宅間医師の協力で実現したことがさらに感動を深めました。
そんな竜之介にもプレゼントがあったと思います。人を喜ばせたいという気持ちと、喜ぶ顔を見て幸せを感じる体験ができたことです。
三人で暮らすことを提案した真意は?
ヒロミが抱いた淡い夢
茶川商店に様子を見に顔を出すヒロミが淳之介の子供らしい笑顔を見せるようになっていて、自分が母親になった姿を想像したのでしょう。
水商売の女が築けるわけがないと思い込んでいた「家庭」の憧れの形がそこに見えたのかもしれません。
普通の家庭を持ちこの町を終焉の地にする道もあると感じ、とっさに「三人で暮らさない?」と言葉を弾ませたのだと思います。
空の指輪ケースが心の糧
指輪は買えず指輪ケースだけを差し出しヒロミにプロポーズし、見えない指輪をヒロミの指にはめてあげたシーンはハイライトです!
それを見て「キレイ…」とつぶやくヒロミには踊り子に戻ることが決まっていたけど、悲観しないで信じる心の糧ができたのでしょう。
夕日を宝石に見立てていたのでしょう。ヒロミが劇場の屋上で竜之介に思いを馳せている様子に彼女の幸せを祈らずにいられません。
竜之介の淳之介へ感情と決心
ヒロミが店を去り落胆する竜之介に追い打ちをかけるように、淳之介が実の父親と茶川商店を出て行ってしまうシーンは涙涙です。
「冒険少年団」が繋いだ竜之介と淳之介の絆は映画の象徴である「東京タワー」のように着実に築き上がっていました。
「冒険少年団」が育んだ淳之介と作者の茶川は知らぬ間に父親の役割になっていて、お互いの存在を求めあうまでになっていたのでしょう。
去っていく淳之介を追いかけ下駄が石畳に突っかかって転ぶ…寂しさの極みです!淳之介が戻って来てくれた時には涙腺が大崩壊でした。
鈴木オートの家族が見ていた夕日
1960年代と言えば「高度経済成長」「集団就職」「家電三種の神器」などが象徴的なワードです。
茶川商店のお向かい「鈴木オート」に地方から東京に集団就職に来た「六ちゃん」を通して、「高度経済成長期」の様子もわかりました。
また、当時家庭に普及しはじめた家電の三種の神器のうち「テレビ」と「冷蔵庫」の二つが登場しました。