車社会の象徴である三輪トラックのミゼットは「鈴木オート」の未来を象徴する希望でもあります。
親心と雇用人の人情
「里心がつく」この言葉を映画を観て知った人も多いでしょう。簡単にいうとホームシックのことです。
子供を都会に送り出す親は子供が雇われ先で仕事に専念できるよう、故郷に未練が残らないように厳しく冷たくあしらうことがありました。
また親は自分の子供が雇われ先で可愛がってもらえるように気を使い気にかけていて、雇い主も親がわりとして親身になった時代でした。
戦争を知らない子供の心
戦争経験のある鈴木則文は短気で「昭和の親父」の典型的な人物ですが、自社ビルを建てるという夢を抱く情に熱い男気のある人物です。
一平は平和になった日本をしみじみ実感する両親の愛情をたくさん受けて育ちました。
その鈴木家の三人が完成した東京タワーと師走の夕日を見て何を感じたでしょう?
トモエが「今日もキレイねぇ」と言えば則文も「あぁ、キレイだ…」と感慨深くつぶやきます。
一平は「あたりまえじゃん!明日だって明後日だって50年先だってずーっと夕日はキレイだよ」と言います。
トモエと則文は「そうね。そうだといいわね」「そうだといいな…」というのです。
引用:ALWAYS 三丁目の夕日/配給:東宝
平和になったあたりまえの風景で育った一平と、戦争を経験した両親が目の当たりにしている東京の発展は感じ方が違っていました。
しかし、未来に望むことは三人とも同じで「あたりまえ」が「あたりまえ」であるように平和を祈ったのでしょう。
その平和と発展の象徴が完成した「東京タワー」の威風堂々とした佇まいなのです。
あたりまえの風景が「ALWAYS」であるために
技術の発展が目まぐるしく進み、世の中が便利になっていくことと引き換えにそこに暮らす人たちの気持ちはスピードに追われています。
この作品は人が感情に素直になったり、たしなめたり、失敗から学んだり人同士が助けあい思いやれる「あたりまえ」の時代でした。
時代とともに変わりゆく風景の中で、その大切な「あたりまえ」が失われつつあることを現代人に伝えている映画ではないでしょうか?