フェスで歌う事がアキの夢であり、颯太はアキにフェスの舞台に立つ事で恩返しをしたかったのです。
颯太とアキの出会いは偶然ではなく必然だったといえます。
カセットテープの上書きは二人が出会った時にもう始まっていたといってもいいでしょう。
それが二人の運命で、アキの想いを受け継ぐ為に必要な出来事だったのです。
フェスでアキが「カナさん」と呼んだ理由
最後にもう一度だけ、颯太の身体を借りてフェスの舞台に立ったアキ。
フェスの会場に一緒に辿り着いたカナの事を呼び捨てではなく「カナさん」とさん付けで呼びます。
その理由とは何だったのでしょう?
颯太と幸せになってほしいから
自分の大切な人であり、恋人であったカナを守るのはもうこの世に存在していない自分ではなく、颯太だとアキは思ったのです。
中身はアキでも、颯太のふりをする事でカナと颯太には幸せになってほしいと、心からアキは願ったのでした。
いつまでも亡くなった自分の事を引きずるのではなく、颯太と一緒に前を向いて歩いていってほしいとアキはそう思ったのです。
颯太とカナが惹かれあっている事は明白で、二人に幸せになってほしいというアキの最大限の思いやりであり、最後の優しさといえます。
なので「カナ」と呼び捨てにするのではなく、「カナさん」と颯太がそう呼ぶようにカナの名前を呼んだのです。
カナにさよならを告げるため
最後にケンカをしてそのまま仲直りをする事なくこの世を去ってしまったアキは、カナに対して申し訳ないと思っていました。
アキがこの世に残した唯一の未練は、カナだったのです。
“ごめんね”も言えないまま死んでしまった自分を責めると同時に、カナにちゃんと“さよなら”を言いたいとアキは思っていました。
この「カナさん」という言葉にはもう自分は本当にいなくなるけれど、どんな形でも幸せになってね、さようならという意味が込められていたのです。
新しい日々をスタートさせるため
「カナさん」の正確な部分の台詞がこちらです。
「行こう、カナさん」
引用:サヨナラまでの30分/配給会社:アスミック・エース
これには自分が叶えられなかったフェスの舞台に行こうという意味と、新しい日々の為のスタートだという意味の行こうという二つの意味が込められています。
アキは、カナや大好きな“ECHOLL”のメンバー、そして何よりも颯太にかけがえのない程の感謝をしていました。
最後に身体を貸してくれて、自分が生きている時に立てなかったフェスの舞台に立たせてくれた颯太にアキはありがとうを言いたかったのです。
自分がいなくなっても大好きな音楽を続けて、自分はもう見ることのできない新しい日々を颯太にスタートさせてほしいとアキは最後に願いました。
このアキの力強い台詞が、颯太を何よりも励まし、勇気を与えたのです。
最後に中身が入れ替わって、元の颯太になっても堂々と歌を歌えたのはアキのおかげであり、颯太の自信へとつながりました。
何故、カナはアキだと気付いた?
物語の中盤で颯太の身体を借りたアキが本当にアキなのではないかとカナが気付くシーンがあります。
このシーンは作品においてどういった意味をもたらしたのでしょう?
アキの存在証明
アキしか書かないはずのサインが颯太から貰ったカセットテープに添えられていた紙に書かれていた事で、カナは颯太の中身がアキなのではと疑い始めました。