「蘭が見つからない」という事は、すなわち「蘭が死んだ」という事を意味します。
そして、そうした状況で涙を流すという事は、「諦めて絶望した」=「蘭の死を受け入れた」という事になってしまうのです。
実際この時、その場に居合わせた少年探偵団のメンバーや園子は、みんな揃って泣いていました。
彼らは既に蘭は死んだと思いその死を悲しんで泣いていたのです。
しかし、江戸川コナンというキャラクターを考えれば、蘭の死をそんなに簡単に認めるわけが無い事が容易に分かります。
コナンは新一としても、また名探偵としても、蘭の行方を見つけ出す事を絶対に諦めるわけが無いのです。
つまりコナンはこの時「泣く=諦め」てはいなかったと考えるのが妥当ではないでしょうか。
それどころか、蘭の生存を決して諦めていないからこそ、次の手を考え出そうと「汗を流した=焦っていた」、という事が分かるのです。
決して諦めない=決して泣かない名探偵
今回のシーンは、頬の中央に雫を這わせるという、いかにも涙を流しているかのように見せる事で、ある意味意図的な「ミスリード」を行なったのかもしれません。
その思惑通り、「とうとうコナンが泣いた?」という憶測はその後も長く、ファンの間を飛び交いました。
しかしこの曖昧なシーンを入れる事で、改めて「江戸川コナン」というキャラクターがどういうものかを知ることとなります。
たとえ周りにいる全ての人が諦めても、同じように泣いて諦めるようなキャラクターでは無い事をかえって印象付けたのです。
そして、コナンがこのような危機的状況でも涙を流さないキャラクターだからこそ、「名探偵コナン」のそもそものコンセプトにつながります。
見た目は子供でもどんな事件でも解決出来る、当代きっての名探偵としていつでも頼もしく観ていられる、その理由が示された形になったのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
コナンシリーズ第17作目の『絶海の探偵』について、劇中に残された謎を読み解いてきました。
コナンシリーズの中でもまんまとその思惑にはまってしまう、後味のすっきりとした作品だったといえるのではないでしょうか。
数々の事件に挑み、解決してきたコナンだからこそ、ここで改めて彼のキャラクターがどんなものかを認識させる必要があったのかもしれません。
難事件をいとも簡単に解決するのではなく、そこには誰にも負けない「諦めない」という強い信念があったのです。
これからも続いてくコナンシリーズ、この先もきっとコナンが涙を流すことはないのかもしれません。
しかし、一方でそういった人情味あふれるコナンの一面も見てみたい気もしますね。
今後の作品にも注目していきましょう。