いわば本作自体が福島軸の物語といっても過言ではないのかもしれません。
歌舞伎町が持つ意味
本作の舞台となった歌舞伎町ですが、全てを飲み込む混沌とした街として描かれています。
歌舞伎町の持つ意味とは一体なんだったのでしょう。
歌舞伎町へのオマージュ
本作のタイトル『さよなら歌舞伎町』は、街としての歌舞伎町へ向けられたものでもあります。
その言葉通り、歌舞伎町という街が変わりゆくことに対してのオマージュも込められているのでしょう。
歌舞伎町の変化
新宿といえば、今も昔も多様な人たちが集う、エネルギー溢れる街という印象は変わりません。
歌舞伎町を象徴する場所でもあった2008年末にコマ劇場が閉館し、その跡地は「新宿東宝ビル」として生まれ変わりました。
本作が撮影されていたのは、新しいビルの建設途中の時期と重なっているのです。
まさに、変わりゆく新宿歌舞伎町を背景に撮られた映画だといえるのではないでしょうか。
新しく整備されたからこそ、この地域に足を運びやすくなった人も居るでしょう。
しかし一方で、歌舞伎町を失うことで居場所が消えた人たちも存在するのです。
本作に登場する人たちは、まさに居場所を求めて歌舞伎町で暮らし生活の糧を得ている人々がメインです。
居場所である歌舞伎町が失われていくという、哀しさも含まれているのかもしれません。
平等の街、歌舞伎町
社会には色々な事情がある人が生き、誰もが一生懸命で上下優劣をつけるようなものではありません。
しかし、世界はフェアには作られていないのです。
本人の責任ではないのに、底辺を生きることしか出来ない人も沢山存在しています。
しかし、劇中で描かれた歌舞伎町では皆が平等に苦しみ、皆が同じように闇を抱えて生きていました。
歌舞伎町とはそんな街なのです。
例え幻でも一瞬だとしても、皆が同じように夢を持てる場所、それが歌舞伎町なのでしょう。
歌舞伎町のような場所が「浄化」されていく先の社会の在り様も考えさせられる映画ではないでしょうか。
想いが交差する街を描いた
『さよなら歌舞伎町』は、様々な人生のスタートを描いた映画です。
真っ当に生きられる人ばかりじゃない世の中で、迷いながら前に進もうとする姿に何を感じたでしょうか。
変わりはてた福島と変わっていく歌舞伎町…。
人物像の中に、それぞれの街への想いをのせた作品です。
人の人生は繋がっており思わぬところで交差しているものだ、と実感します。
本作と「彼女の人生は間違いじゃない」を併せて楽しむのもいいのではないでしょうか。