最後に複雑な表情を浮かべた森口先生は、復讐をしても死んだ娘は返ってこないという悔しさを実感したことでしょう。
そして消えない悲しみを抱えたまま、涙を流しこんな言葉で締め括っています。
「なーんてね」
引用元:告白/配給会社:東宝
教え子を正しい道に導くのが教師としてのあり方だとわかっていても、娘を失った母親としての復讐心が勝っていたといえるでしょう。
共通の言葉が少年Aの心に追い討ちをかけた理由
映画の中で少年Aが何度も使っていた「なーんてね」という悪ふざけの言葉。
この言葉は、娘を殺したことすら反省せず、なんとも思っていない様子でふざけていた少年Aに対する復讐心をより強くするきっかけになっていたのでしょう。
ラストで森口先生が涙を流しながら言った次の言葉。
「これがあなたの更生につながる第一歩になります」
引用元:告白/配給会社:東宝
この言葉を打ち消す意味での言葉であれば、森口先生は少年Aの更生など望んでおらず、復讐のキメ台詞という捉え方になります。
この言葉に、教師や母親としての意識があるか
森口先生の心の葛藤は、映画の中でも何度も描写されています。
教師であることや子供を育てた母の立場として、犯罪を犯した少年Aを正しい道に導かなければという想いがあったのかもしれません。
間違った行動をしていることを反省させ悔い改めさせるためにおこなった復讐劇であれば、先ほどの言葉の意味は大きく変わってくるでしょう。
一方で、少年Aの母親のもとに爆弾を持っていったことに対しての言葉だったとしたらどうでしょう。
少年Aが自分のやったことの重大さに激しく後悔したさまを見るだけで充分復讐ができたことになります。
小説にはなかったラストシーンの意味
実は、森口先生が爆弾の入ったカバンを少年Aの母親のもとに持っていったという証拠はありません。
そのため本当に爆弾が爆発したのかも不明なまま終わりを迎えます。
『告白』という作品は、小説でも映画でも謎が多く残るミステリアスな作品です。
小説との大きな違いであるラストシーンで森口先生が言った先ほどの言葉の意味は、どれが正解だったのでしょうか。
少年たちに娘を殺し犯した罪を後悔させるべく、復讐する森口先生の気持ちの揺らぎに注目すると、新たな答えが見えてくるかもしれません。
まとめ
今回は『告白』について、見終わった後も残される謎について考察し解説してきました。
いかがでしたでしょうか。
これという事実は明かさぬまま終わってしまうストーリーから、私たちは何を学べるでしょうか。
復讐をしても事実がかわることはないということかもしれませんし、少年犯罪に警鐘を鳴らすという意味でも捉えることができますね。
別の視点から見てみれば、母親と子の関係性にフォーカスした作品でもあります。
母子の関係は人ひとりの人生に多大なる影響を与えるということを改めて知ることができる内容でもありました。
現実社会でも起こっている悲しく絶望的な事件とリンクして観ると、そんな世界で生きる者たちへのメッセージが込められていることが分かります。
森口先生が冒頭に行った『告白』を踏まえて、何度も繰り返して観たくなる衝撃的な作品といえるでしょう。