「それ」その正体については公開後様々な意見が飛び交っています。
「それ」の正体は、確実に迫る死
本作の「それ」の正体については様々な意見が上がっていますが、最も有力な意見は「それ」=「死」というものです。
冒頭から死ぬことへの恐怖を植え付けられ、常に生きる者の後ろを追ってくる「死」こそ、恐怖の正体ではないでしょうか。
時計の秒針が一定のスピードで進むのと同様に、人間の一生も一定のスピードで進みます。
劇中の「それ」が一定のスピードで迫ってくるのもその為でしょう。
無限の可能性を秘めている
引用:イット・フォローズ/配給会社:RADiUS-TWC/ディメンション・フィルムズ
上記は劇中に登場するセリフですが、赤ん坊は死という存在が追っていることも知らず人生を謳歌できる、とも読み解けます。
性病のメタファー?
「それ」がセックスによる性病のメタファーなのではないか、という意見もありました。
確かに他人と関係を持つことで「それ」がうつる、という設定は性交渉によってうつる性病を連想させます。
乱れた性問題への警告かと思いきや、こちらの説は監督デヴィッド・ロバート・ミッチェル自身によって否定されています。
台詞に隠された「死」へのヒント
本作には「それ」が何なのかを示すヒントが、セリフとなって登場しています。
白痴を愛読するヤラ
劇中に登場するヤラは、ドストエフスキーの書いた「白痴」の中のセリフを、何度か語りかけています。
家の下敷きになる寸前など窮地に陥ると、人は目を閉じて最後の瞬間を待ちたがるものだ。
引用:イット・フォローズ/配給会社:RADiUS-TWC/ディメンション・フィルムズ
上記のセリフも「死」を匂わせており、死に対してはただ待つしかないというメッセージと受け取れます。
また下記のセリフでは「死」は避けられないということを示しています。
最悪の苦痛は後1時間、あと10分、あと30秒で
そして今この瞬間に魂が肉体を離れ人でなくなると知ること
この世の最悪はそれが避け難いと知ることだ引用:イット・フォローズ/配給会社:RADiUS-TWC/ディメンション・フィルムズ
彼女のセリフは「それ」に繋がる大きなヒントなのではないでしょうか。
なぞかけのようなヒント
色んな人間に見えるが実態はひとつ
引用:イット・フォローズ/配給会社:RADiUS-TWC/ディメンション・フィルムズ
劇中でまるで観客に謎かけをしているようなセリフもあります。
わかりそうでわからない、理解できないということが人の恐怖を生み出す元となっています。
もしも正体を明確に示していたら、恐怖は半減していたのではないでしょうか。
「それ」を明確にしないこと、それこそがこの作品の醍醐味なのかもしれません。
恐怖の内側を描いている
『イット・フォローズ』に秘められた恐怖は「それ」だけではありません。
観る者の心の奥へ入り込む
一晩の関係を持てば不幸が相手へと移る、という設定は人間の心の弱さや醜さを引っ張り出しているといえるでしょう。
もしも自分だったら、他人へ移すことで助かるなら……。
観る者ひとりひとりの中に潜む、狂気へ直接語りかけてくるのです。
死と対面した時に人間はどんな行動をとるのか、本作には心へと訴えかけてくる恐怖があります。
恐怖の対象は「人間」
見た目は怖くない「それ」は人間の姿をしていますが、ここに大きな意味があるのではないでしょうか。
本作で追いかけてくるのは、自然な「死」ではないのかも知れません。
犯罪や自殺など、若者が巻き込まれる悲劇的な「死」なのではないでしょうか。
悲劇的な死は人間によって引き起こされるものです。
結末はハッピーエンドなのか
本作の捉え方は観る人によって違います。