ジョンは意中の女性とヨットでの生活までこぎつけたものの、そこには子供の姿がありました。
子供がカップルに派遣されるのは、二人で問題を解決できない時。
また、親子三人の会話はあまりにも単調なものでした。
またジョンの秘密がバラされた時、彼女は何食わぬ顔でデヴィッドの顔を平手打ちしました。
すでに彼女はジョンの秘密に気づいており、今まで知らぬふりをしていたのです。
皮肉な「共通項」
デヴィッドは劇中の冒頭で妻から別れを告げられています。
その時の夫婦の会話に注目してみてください。
皮肉にも、カップルの共通項であった眼鏡が、別の男性と妻を結ぶものになってしまったことを意味しています。
そして、カップルは終わりを迎えてしまいます。
これは誰にでもあり得る共通項は、誰にとっても共通項になることを暗示しています。
二人の十一年と一ヶ月の間に、互いを思いやる愛は存在していなかったのです。
偽装のカップルはなぜ続かないのか?
愛への不信感
独身者の確保における女性記録保持者である彼女は「動物に最も近い人間」として描かれています。
感情を一切無にして生きるためだけに夜の営みをする彼女の姿は、人間からは程遠いものでした。
デヴィッドが浜辺でジョンに紹介された時の態度、マンションから飛び降りた女性へのわざとらしい冷遇。
これら全ては自分を人間として生かすための、デヴィッドの工作に過ぎませんでした。
そこに彼女への愛は全くありません。
そして彼女もまた、デヴィッドが自分を愛していないのではないかと常に疑い続けていました。
自分たちは気が合うと彼女が発言したのは、デヴィッドが自分の演技に全く反応を示さず自分と同じ冷酷な人間だと思ったから。
ただそれだけです。二人は愛を望んでいた訳ではなかったのです。
手段としてのパートナー
ある夜、独身者たちがカップルを襲撃します。
カップルの愛が本物かを確かめるのが目的であり、武器はあくまで二人を境地に追い込むための道具に過ぎませんでした。
人間であり続けたいという目的だけが唯一の共通項であるカップルたちを追い込み、独身者・仲間に引きずり込もうとします。
自分とパートナーのどちらを優先させるのかが描かれている本シーン。
つまり、自己愛と他者への愛のどちらを優先させるのかということです。
取り繕った二人の共通項は顕になり、人間のエゴイズムがより一層あぶり出されています。
パートナーを思う気持ちはさらさら存在しませんでした。
カップルは自分の希望を叶えるためだけの手段にすぎなかったのです。
自らデヴィッドが盲目に“なろうとした”真意は?
共通項を失った二人
お互いに近視という共通項があったことで、運命を感じることが出来ていました。
しかし彼女は盲目になり、デヴィッドとの共通項であった近視を失ってしまうのです。
これを機に、デヴィッドからの愛情は次第に希薄になっていきます。
物当てゲームの最中でついた彼の嘘、目前に居るのに狩られることのないウサギ。
共通項という分かりやすい指標を失ってしまったが故に、二人の関係は大きく揺らぎ始めたのです。
共通項を取り戻すために
ある日デヴィッド達は、二人だけで町へ向かって駆け落ちを決行します。