これこそ、フィリップが求めていた「障害者だからといって同情されたくない」ということに結び付くものなのでしょう。
劇中で読み取るフィリップの職業
フィリップはパリ市内に大豪邸を所有していますが、彼の資金源や職業について、劇中ではっきりと語られているそれらしき場面はありません。
唯一お金に対する考え方が分かるシーンが、ドリスがフィリップに“女が男に求めるものは何か”というような質問をした時ではないでしょうか。
外見や品の良さという回答をするフィリップに対し、ドリスの答えは金銭能力だと言います。
できれば銀行口座以外の魅力で勝負したい
引用:最強のふたり/配給会社:ギャガ
ドリスの言ったこと聞いてフィリップはこう言い返すことから、フィリップの仕事は資産家等と考えるのが妥当ではないでしょうか。
フィリップの心の負担、映画のラストが示す意味とは?
エレオノールの存在が二人に与えた影響とは?
フィリップとエレオノールの文通が半年にも渡って続いていたことを知ったドリスは、きっと彼の気持ちを応援したいと思ったことでしょう。
手紙では好感触であるもののそれ以上進展できないのは、フィリップが自分が障害者であることを彼女に知られたくなかったからです。
エレオノールの電話番号を見つけ、勝手に電話をかけてしまうドリスの行動からは、友人であるフィリップの恋を応援したいという気持ちが伝わってきます。
しかしフィリップは己の意思とはお構いなしにとんとん拍子に進んでいってしまう事態に、心の負担を感じていたのではないでしょうか。
だから彼は一度目の会食の約束をすっぽかすなんてことをしたのだと考えられます。
フィリップにとって喜ばしい出来事でありつつも複雑な心境だったにちがいありません。
互いの為を思うが故に別々の道を選んだ二人
気付けばいつしか親友のようになっていたフィリップとドリスですが、その関係はフィリップの弟、アダマの言葉よって終わりを告げます。
これは君の一生の仕事じゃない
引用元:最強のふたり/配給会社:ギャガ
ドリスの助けを本当に必要としている人は他にもいると考えたフィリップは、これ以上自分の為だけにドリスを束縛することはできないと思ったのでしょう。
そしてそれはドリスにもいえることです。
ラストの場面で、エレオノールを自分と入れ替えにフィリップの前に行くよう手配したとのかと思うと、ドリスの想いが粋であり最高の友であることが分かります。
ドリスもまた、フィリップに本当に必要なのは自分ではなくエレオノールだと考えてのことだったのでしょう。
このラストの場面は、互いを思い、互いの幸せを願うが故の前向きな別れの場面として解釈することができますね。
まとめ
車椅子生活の大富豪と貧民層のアラブ系青年という全く境遇のちがう二人が主人公の『最強のふたり』を解説してきました。
いかがでしたでしょうか。
人は肌の色や貧富の格差、様々な理由で簡単に他人を差別します。
しかし彼らを見ていると、出自や境遇がちがっても真に心を通わせ合い、本当の友達になることができるのだと教えてくれているようです。
そしていくつになってもかけがえのない友情を手に入れることはできるのだということを私たちに教えてくれているように思えます。
何度でも観たくなるような、そして観たら心が豊かになるような、後世に伝えていきたい名作といえるのではないでしょうか。