しかし第2部に入ると、序盤こそ鬱症状が重症化しますが徐々に冷静さを取り戻すジャスティン。
逆に周囲は隕石衝突の可能性に怯え、神経質になっていき冷静な判断力を失っていきます。
その中でもジョンは、ジャスティンに対する怒りや悪感情はありながらも、親身に世話をしていました。
怯えるクレアには冷静に天体の軌道を解説して安心させたりレオにも優しく接したり、あまり変化しないように描かれています。
観客の立場に立ってキーポイントの天体を伝える役割
最後に本作のラスボス的存在の「メランコリア」という隕石を観測する唯一の存在がジョンでした。
プロなのかアマチュアなのか謎ですが、とにかく天体について詳しいのです。
ジャスティンが気になった赤い星を「さそり座のアンタレス」と教えてくれる重要なキーワードを残します。
この赤い星の消滅がターニングポイントとなり、物語の視点が180度変わっていくことになります。
さらに、第2部で地球に衝突する隕石「メランコリア」の動向について、観客はジョンの視点から情報を得ていくことしかできません。
望遠鏡を覗くジョンの反応をみて、我々観客は最終的に隕石の軌道が地球に直撃することを知ります。
こうして、スクリーンから退場したジョンは、次の登場シーンでは馬小屋で自殺した死体となっていました。
自殺の真相
唐突な死
世界滅亡を確信した家族思いだったはずのジョンは、唐突に家族を捨てて自分だけ逃げるように馬小屋で自殺するわけです。
これまでに説明したファクターからジョンの自殺の要因は大きく2つあると考えられます。
それは、作中ベースの要因と作品としての要因と考察できると思います。
作中の要因
終末を迎えナーバスになっていくクレアが、ジョンの中で嫌悪に似た感情を抱いていたクレアの母親やジャスティンに重なっていったのでしょう。
さらに、息子のレオはジャスティンを敬愛しており、愛憎裏返り家族を置き去りにし愛馬の近くで死を選んでしまいます。
作品としての要因
映画の見せ方として、一番まともな人物だったジョンに、最も取らなさそうな行動を取らせています。
第1部と第2部の主人公ジャスティンの対比を顕著に描くとともに、人間の心の脆弱さや不確かさを表現しているのです。
ある意味で、ジョンはそのスケープゴートとしてその役割を全うさせました。
ジョンの自殺は作中で動機付けをする判断材料が極端に乏しいです。
それほどまでに唐突だったので、最も謎に包まれた部分のひとつといっても過言ではないでしょう。
しかし、作中の細かな心理描写と作品全体としてのジョンの立ち位置を再考察すると、上記の2つが自殺の真相だと結論づけたいと思います。
作中において最も重要な3人の関係
単刀直入にいうと最後のシーンの考察になりますが、まずはジャスティンとクレア&レオの関係性を掘り下げたいと思います。
ジャスティンとレオ
レオを寝かしつけてあげたりレオを優しく諭してあげたり…。
奇行を繰り返すジャスティンですが、レオと接する時だけはニュートラルな彼女でいられるように見られます。
レオも、周囲に奇異や偏見で見られているジャスティンに、純粋な眼差しで尊敬しているのが伝わってきます。