アニーが書き直すよう強要したミザリー新作は彼女の理想とするストーリーになっていきました。
ポールは、気分の良い彼女の前で出来上がった原稿を燃やすことで精神的な打撃を与えようとしたと考えられます。
自分の理想のストーリーを目の前で焼かれることの精神的苦痛は、ポールにはよくわかっていたのです。
心中を決意したアニーは愛に渇望していた
拳銃に2発の弾丸を込めて心中を決意したアニー。
ポールを愛するあまり究極の行動に出たように見えますが、彼女の本心はどうだったのでしょう。
ポールから愛されないことも自覚していた
アニーは自分とミザリーを重ね合わせています。彼女の空想の世界ではアニーはミザリーなのです。
自分がミザリーであると錯覚しているアニーは、ポールが描く小説のすべてを愛し、やがてポール本人をも愛するようになります。
ただ、彼女はポールからは愛されてはいないことを自覚していたので、ポールを支配することで欲求を満たそうとしたのでしょう。
劇中では愛されない理由として環境や容姿に触れていますが、自分の異常性にも原因があると気が付いていたのではないでしょうか。
あらゆる手段を使ってポールを支配しようとするアニー。
赤いカプセルは中毒性のあるドラッグと思われます。ポールを薬漬けにして自分から離れられないように誘導したのです。
ハンマーで足を砕いてしまうアニーには狂気の行動の裏に、離したくないという究極の愛情すら見え隠れします。
アニーの真意は天国で一緒になること
心中の目的は、ポールとの愛を成就するための最後の手段として天国で一緒になろうとしたと思われます。
クリスチャンのアニーは、かなわないポールとの愛を神の手にゆだねようと考えたのではないでしょうか。
宗教では一般的に自殺することを神の意に背く行為としています。クリスチャンでありながら心中を画策したアニー。
狂気は宗教を超えたのでしょうか。精神的に追い込まれた彼女が、混乱の果てに自暴自棄になったとも考えられます。
まとめ 怖くて悲しい物語「ミザリー」
アニーがミザリーに固執したのは、自分の悲しい過去や境遇を忘れミザリーに自分を重ねて幸せに浸ることができたからでした。
ポールへの独占欲求が愛に発展し殺意に至るアニーのファン心理は、狂信的なファンによるジョンレノン殺人事件を連想させます。
この映画は、幼少期のトラウマに端を発した精神障害をもつアニーが異常な行動と狂った愛でポールを追い詰める狂気の物語です。
ただし、そのストーリーの裏には、妄信的なファン心理と悲しい過去のトラウマが複雑に絡み合って潜んでいると思われます。
ポールには今後も第二第三のアニーが現れるかもしれません。