もう一つ、「ゴジラ対メカゴジラ」の間接的テーマとして、「日本本土と琉球王朝の対立」という要素も盛り込まれています。
その象徴が天願の敬介達に対する批判であり、第3惑星人にキングシーサーの置物を渡すよう要求された時の台詞がこちら。
「これもみんなあんたらのせいじゃ。置物さえそっとしておいてくれたら、わしも那美もこんな目に遭わず…。」
引用:ゴジラ対メカゴジラ/配給会社:東宝
本作が米国と日本の戦争が根底にあるという前提で見ると、これは琉球王朝としての姿を失った沖縄人の反日感情の表れではないでしょうか。
天願達はただの事なかれ主義だったわけではなく、本土人が結果的に米国に占領を許してしまった根深い恨みが本音として出てきたのです。
その証拠にメカゴジラとゴジラがいよいよ戦う時、意を決してキングシーサーを蘇らせて戦っています。
決して戦うことそのものを嫌っていたのではありません。
キングシーサーの役割
琉球王朝に残る伝説に準える形で復活したキングシーサーは本作においてどのような位置付けだったのでしょうか?
様々な側面から考察していきましょう。
柔よく剛を制す
キングシーサーの戦闘能力で特筆すべきは自身に向けられた光線を右目で吸収し威力を10倍にして跳ね返すという能力です。
これは「柔よく剛を制す」を体現した特殊能力ではないでしょうか。
逆にいえばキングシーサーは単独だとそこまで図抜けた戦闘用兵器ではないということです。
事実その特殊能力を分析された後はミサイルなどの光線以外の武器を用いて為す術なくやられてしまいました。
本作の批判点の一つにキングシーサーの弱さが挙げられますが、それは「守り」に特化した神だからでありましょう。
そしてこのキングシーサーがメカゴジラに歯が立たない描写はそのまま米国に歯が立たない沖縄の構図を皮肉にも表しているのです。
星の防衛本能
キングシーサーの恐ろしい所は単独での戦闘力より寧ろ「他の怪獣達を騒がせること」にありましょう。
これは黒沼が手下にきちんと説明しています。
「敵が暗号を解いた以上、いつキングシーサーが目覚めるとも限らん。それをきっかけに他の怪獣共が騒ぎ始めると面倒だからな。」
引用:ゴジラ対メカゴジラ/配給会社:東宝
これは即ち「星の防衛本能」ではないでしょうか。ゴジラをはじめ地球に住む怪獣達は星が生み出した自然の生き物です。
こうして見ていくとキングシーサー最大の役割は「他の怪獣達と共に地球を守ること」にあるのかもしれません。
だからこそゴジラと手を組んで共闘し、メカゴジラを倒す展開に至ったのも頷けます。
自国のことは自分たちで守る
「ゴジラ対メカゴジラ」は背景設定や物語において非常に根深い国家の対立に作られていたことがお分かり頂けたでしょう。
その上で最終的な本作の教訓は「自国のことは自分たちで守る」ということにあるのではないでしょうか。
第3惑星人の脅しに屈さず、しかしだからといって自衛隊に頼ることなく、自国の誇りである怪獣でメカゴジラを撃退したのですから。
そしてそのような社会的・政治的思想を奥底に持ちながら前面に押し出さず、あくまで娯楽としてまとめ上げているのが本作最大の魅力です。
背景設定とテーマ、表現のバランスがしっかり取れており、ゴジラシリーズは再び新しい命を吹き込む傑作となりました。