幼い頃からプリズムショーに憧れを抱いていたユキノジョウでしたが、いつしか高い実力を誇りながらも何者にもなれない自分に思い悩むようになっていったのです。
プリズムショーからの辞退も、一見すると所属チームにとっての最善の選択をしたように語られています。
しかしそこにあったのは中途半端な自分自身に対する逃げの心だった事が明らかに。
ほおずきの花言葉のまま、彼は自分を「偽り」「ごまかし」ていました。
そして自分自身を信じられず常に「半信半疑」だったのです。
ユキノジョウは歌舞伎からもプリズムショーからも逃げたと打ち明けますが、もしかするとシンに出場権を譲った時にその本心からも逃げ出したのかもしれません。
これは常に毅然とし、自分に厳しいユキノジョウを知る人からすれば衝撃的な事実だった事でしょう。
人間「太刀花ユキノジョウ」
いままでユキノジョウの本心が語られる事はあまりありませんでした。
思い悩んでいる描写はあっても、あくまでも彼は実力者であり、常に模範的な良きチームメイトであり先輩だったからです。
またその注目されやすい家柄ゆえ、彼は自分の本心を見せる事を控えてきたはずです。
ですが今作で、初めて彼は生身の人間として私たち観客の前に現れました。
才能ある恵まれた人間などではなく、恐れや弱さを持った一般の人と何も変わらないのだと、誰もが思ったことでしょう。
挫折し、そしてそれをどう乗り越えていくか。それが今作の大きな目玉の1つであった事は間違いありません。
ミナトとカケルのセリフの1つであるこちら。
「ここにいる時くらい、普通の高校2年生の太刀花ユキノジョウでいればいいじゃん」
引用元:KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-/配給会社:エイベックス・ピクチャーズ
このセリフに、ユキノジョウはどれ程救われた事でしょう。
本心はなぜ風呂場で語られたか
今作の「キンプリ」では、様々なシーンで入浴中に本心が語られるという展開が多かったです。
今回のユキノジョウと、同期のミナトやカケルが吐露した本音の場も入浴場ですね。
これには、もうお互いに隠し事はしない、という意思があったのかもしれません。
今度こそ本心からの想いを伝えたのだと、生まれたままの姿で語らせる事で、観客に視覚と聴覚を使って全力で訴えさせたのだと考えられます。
太刀花家と国立屋
伝統ある家に生まれた者として、家業を背負うのは仕方ないともいえる宿命のひとつですね。
生まれた時からユキノジョウはそれに縛られていたのです。
そしてユキノジョウの両親はそれぞれにまた違った囚われ方をしています。
これもまた本作で初めて語られるユキノジョウの両親の過去ですが、両親は全く違う人生を歩みながら、想いは同じところにありました。
それは歌舞伎に全てを注ぐ本気の気持ちです。