アンドロポフ艦長が捕虜として捕まった時、グラス艦長はアンドロポフ艦長に対して協力を呼びかけます。
そのシーンでアンドロポフ艦長を信頼させたのは、グラス艦長が同じ船乗りであることと、ロシアを傷つけることはしない約束をしたからです。
アーカンソーがヤヴチェンコに攻撃を受けているにもかかわらず、アーカンソーは反撃に応じません。
周りのアメリカ海兵は魚雷発射を望んでいるのに、グラス艦長は発射命令を出さずにじっと見つめていました。
つまりグラス艦長は「ロシアを傷つけない」という意思を表していたのです。
そのグラス艦長に感銘を受け、アンドロポフ艦長もヤヴチェンコに対する説得を開始したのでした。
まさに、グラス艦長の信頼がアンドロポフ艦長を突き動かしたのです。
最終的にはザカリン大統領
本来軍事規律において上司の命令は絶対。そうでないと軍としての規律が乱れ、戦術に大きく影響するからです。
アンドロポフ艦長の言葉でロシア兵は攻撃こそ中止しましたが、攻撃態勢は整えています。
そこが限界ギリギリです。それでも、軍法会議ものであることは間違いありません。
しかし、ドゥロフの基地からの対海砲撃を防いだのは、ヤヴチェンコでした。
アーカンソーを攻撃対象から外した理由は、軍事権を持っているザカリン大統領の命令があったからです。
ヤヴチェンコの艦長は納得をしていない…
ヤヴチェンコのロシア兵がいくら動かないといっても、上司である艦長を辞めさせることは乗員にはできません。
ヤヴチェンコの艦長のみ攻撃の姿勢を崩しませんでしたが、その姿勢を解いたのはザカリン大統領でした。
「大統領だ。私の有する全権限を持って言い渡す。アメリカの艦艇への攻撃はすべて反逆とみなす。」
引用:ハンターキラー/配給:ライオンズゲート
この一言でヤヴチェンコに乗っているロシア兵(艦長含め)全員が、攻撃中止の大義名分を得ます。
つまりヤヴチェンコに乗る中で、最後まで攻撃姿勢を崩さなかった船上の一番の権力者は、大統領が説き伏せたのです。
映像にも映されていない「ドゥロフ撃退命令」
ドゥロフの陸からのアーカンソーに対する砲撃はヤヴチェンコが防ぎ、さらにドゥロフがいる基地はロシア空軍が撃滅します。
この命令を出せるのは、他でもないザカリン大統領しかあり得ません。
事件が終わり、大統領とアンドロポフ艦長をロシア船に送り返すシーン。ここでグラス艦長は二人に感謝の言葉を述べます。
それに対して大統領はグラス艦長がすべて知っていたのか聞きますが、グラス艦長は二人を信じていたことだけを話しました。
このシーンから、大統領とアンドロポフ艦長でアーカンソーのスピーカー、ないし無線を使ってロシア軍部と連絡を取っていたことが分かります。
軍事権の規定から考えると、ヤヴチェンコの防衛砲撃と空軍の基地撃滅の命令を下したのはザカリン大統領。
映像として映し出されていないので、分かりにくいですが、最後の最後にはザカリン大統領がすべてを丸く収めたと考えられます。
ドゥロフのクーデター・米ロの協同という新しさ
これまでのハリウッド映画では、米ロの協同シーンはなかなか見られないものでした。
『ハンターキラー』では結局アメリカ軍の優秀さを描き出しますが、ドゥロフのクーデター以後米ロの協同がいくつかの場面で登場します。
- グラス艦長とアンドロポフ艦長
- Seal部隊とザカリン大統領護衛
- 潜水艦と駆逐艦の兵士同士
今後の世界情勢はこれまでの二大大国が手を取り合いながら乗り切る、という製作側の意図が見え隠れする『ハンターキラー』。
ドゥロフのクーデターやロシア兵の攻撃中止から、映画の新たな魅力が掘り出されます。