チームの統一性を重視し個性を殆ど出さずに完成度の高さで勝負するトレブルメーカーズはチームとして一つの理想でしょう。
しかし、ベラーズのようにメンバー個々の才能を見せ場として生かし、バラバラであることを強みに変えるのも一つのあり方です。
どちらが正解ということはなく、どちらもゴールをしっかり見据えて優勝に向かい最後まで頑張ったことには変わりありません。
ベッカを起点としてベラーズはその本質に辿り着くことが出来、そうであるからこそ優勝の高みにまで行けたのでしょう。
「ブレックファスト・クラブ」が伝えること
さて、ベッカが立ち直ったきっかけである「ブレックファスト・クラブ」を観るようになったきっかけを考察しましょう。
あの作品では個性が異なる5人の男女が学校への不満をきっかけに自分と向き合い、個性を受け入れまとまっていきます。
これは正にベッカ並びにベラーズが抱えていた問題と本質的に共通し、また同時にベッカが進むべき道を描いてくれていました。
またそれは「ピッチ・パーフェクト」自体がアカペラを題材にした「ブレックファスト・クラブ」の再構築でもあるということです。
そのことをベッカはどこか自分を見直すきっかけとして感じていたのかもしれません。
ベッカを突き放したジェシー
もう一つ、映画に感動したことを伝え謝罪したジェシーは一度ベッカを拒絶します。
ジェシーは何故このような冷たい仕打ちをベッカにしたのでしょうか?
ジェシーが本当に許せなかったこと
ジェシーは決してベッカが嫌いだからとか自身を傷つけられたとかで謝罪を拒絶したのではありません。
彼はベッカが自身を心配する人達を無為に傷つけていることに無頓着であることが許せなかったのです。
そのことを有耶無耶にしたままベッカが真っ先に自分の所に謝りに来たのが筋違いに映ったのでしょう。
ジェシーが一番ベッカに望んでいたことは傷つけたベラーズへの謝罪と貢献です。
だからこそ敢えて厳しく突き放すことでベッカにきちんと責任を果たして欲しかったのではないでしょうか。
仲直りは成長の証
一度はベッカを拒絶したジェシーが最後に受け入れたのはベッカがしっかり責任を果たし成長したからです。
ここが単なる男女のラブロマンスに終っていない所で、青春ではあるがそこに「大人の責任」がしっかり感じられます。
どちらかというと友情物語や仲間としての絆という側面が強いのではないしょうか。
男と女だからといって決して甘やかさない所が「ピッチ・パーフェクト」の素晴らしい所です。
コメディに覆われた王道の青春物語
「ピッチ・パーフェクト」は表面上コメディとしての派手さ、また下品な描写が目立つおバカ映画です。
しかし、コメディとしての装飾を剥いでいくと、奥底にはこれだけ素晴らしい王道の物語が隠されています。
ミュージカル映画としても非常にクオリティが高く、だからこそ続編が作られる人気作となったのでしょう。
それを決して重くし過ぎず、陽性のトーンで誰にでも見やすく表現しているのが本作ならではの魅力です。
ミュージカル映画を好きな方もそうでない方も是非一度ご覧になってはいかがでしょうか。