鏡はあの世への入り口といわれることもありますが、この映画ではあの世のものを写す役割をしているようです。
つまり鏡に写ったものは悪霊であり、この世のものではありません。
悪霊を見ることができるようになったということは、あの世に侵されている証拠です。
これを念頭に置いて映画を見ると、いつから誰があの世に足を踏み入れたのかが分かります。
鏡のシーンが作品中で何度も登場するのは、観客を驚かせるためではないのです。
そこにはトランス一家が悪霊に飲み込まれていく様子を見せるという目的がありました。
鏡のシーン解説
これを踏まえて鏡のシーンを解説していきたいと思います。
237号室全裸の女性
237号室に入ったジャックは美女と出会います。彼女はこの世のものではありません。本来なら鏡に映る側の存在です。
しかしジャックは鏡に腐乱した老婆を見ます。こちらの老婆の方が現実世界なはずではないでしょうか。
つまりこの時点であの世とこの世が逆転してしまっているのです。ジャックはあの世の存在である美女と同じ空間に存在しています。
そうなるとすでにジャックはあの世に取り込まれているようです。
トイレのグレイディ
トイレでグレイディと会話するジャック。
目の前にいる男が以前のホテルの管理人だったとするなら、彼はこの世にいるはずはありません。
人間なのか霊なのか確かめるために、ジャックは鏡にグレイディが写っているか見ようと試みます。
しかしジャックとグレイディが会話をしているときに、鏡の中の2人は映像に映し出されていません。
なぜ鏡に映るシーンが挿入されなかったのでしょうか。ここで1つの仮説が生まれます。
グレイディはあの世の住人です。そんな彼と対面して会話しているのなら、ジャックもあの世に来ているのではないでしょうか。
あの世から鏡を見ればこの世が映るはず。トイレのシーンで鏡に映るべきなのはこの世の光景です。
トイレの鏡に彼らが映らないのは、この世に彼らがいないからなのではないでしょうか。
237号室の件であの世の住人であることが確定されたジャックがトイレの鏡に映らないのは当たり前だといえます。
「REDRUM」
「REDRUM」が鏡越しに「MURDER」と読めた瞬間、これまでの鏡のシーンが伏線であったことに気付いたのではないでしょうか。
鏡は物事を逆さに映します。これはあの世とこの世が逆転することを暗喩しているのです。
つまりウェンディとダニーもここで霊の世界へ足を踏み入れたことが分かります。
これでトランス一家全員、ホテルに飲み込まれてしまったのです。
まとめ
原作小説の随所をカットし、アレンジ要素を盛り込んだからこそ映画「シャイニング」は解釈の数も大幅に増えました。
公開から40年近く経った今でも語り継がれ、続編や関連作が次々出てくるのには理由があったのです。
あなたは、鏡の向こうに何が見えますか?