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当時タブー視されていた同性愛に翻弄されるイニスとジャックの真実の愛を描いた映画「ブロークバック・マウンテン」。
2人の愛はボタンの掛け違いの様に、最後まで一致することなくジャックの死で幕を閉じました。
現代であれば彼らもこれ程まで苦悩することもなかっただろうと思うと胸を締め付けられます。
この映画では情景描写をメーンにストーリーが進むので、肝心なところを明言してくれません。
そこで今回は監督が観客に考察の余地を持たせたジャックの死因・2枚のシャツに隠された真相・イニスが号泣した理由についてみていきます。
ジャックの死因
ジャックの妻によるとジャックの死因は事故死だったようですが、彼女は本当に真実を教えてくれたのでしょうか。
イニスは死因を同性愛者へのリンチだと感じていたようです。
知らない相手からのリンチ
当時の同性愛者差別の状況からすると、誰がジャックをリンチしてもおかしくありません。
ジャックと浮気相手の逢引を偶然目撃した人間が犯人だった可能性もあります。
妻の立場なら夫がゲイだったことを、なるべくなら伏せておきたいはずです。
それにもし周りの人にジャックがゲイだったと知れたら、その妻にも被害が及ぶかもしれません。
だとしたら彼の妻がそのリンチを隠したのも保身のためと考えることができます。
義父からの制裁
ラリーンの父は「男は男らしく」という考えの持ち主。そんな人物が、義理の息子であるジャックがゲイだと知ったらどうなるでしょうか。
きっと殺してしまうのではないでしょうか。それにラリーンの父は経営者でお金持ちです。
社会的に成功者であり、悪い芽は摘みたいと考えていたと思われます。
ラリーンが電話越しに何とも言えない様子だったのも、自分の父が夫を殺したという罪悪感が含まれていたためかもしれません。
ジャックの死を知ったイニスの心境
ジャックの死が同性愛差別に由来すると感じたイニスはどのような心境になったのでしょうか。彼の胸に飛来した想いを考察してみたいと思います。
虐殺を恐れてジャックと一緒にならないことを決断したイニスですから、死因を聞いて「自分は正しかった」と思ったはずです。
そして「異性愛者である自分を演じなければいけない」と再確認したのではないでしょうか。
ジャックを失ったことへの悲しみと共に人生への絶望も感じたと考えられます。
父に殺された被害者の姿がフラッシュバックし、当時かけられた呪縛が以前にも増して強固になったことは明らかです。
イニスの恋愛対象は?
ジャックと愛し合う反面、イニスは同性愛を受け入れていない描写があります。