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「アパートの鍵貸します」や「麗しのサブリナ」などを監督しロマンティック・コメディ-の巨匠と呼ばれるビリー・ワイルダー。
彼が「七年目の浮気」に次いでマリリン・モンローを起用し1959年に製作した映画史に残るコメディの傑作が「お熱いのがお好き」です。
モンローにジャック・レモンとトニー・カーティスというコメディ映画の至宝を迎えトリオで繰り広げられる良質の喜劇。
ドタバタあり・サスペンスあり・爆笑あり・歌唱あり、そしてもちろん恋愛ありのてんこ盛りの内容がテンポ良く進みます。
ビリー・ワイルダーの作風はその後の多くのフィルムメイカーたちに影響を与え、それはテレビの世界にまで及びました。
ここではコメディ映画の教科書ともいうべき本作を、主演3人の恋愛模様を中心に考察してみましょう。
脚本の上手さ
脚本家出身のワイルダー
ビリー・ワイルダーは、脚本家として映画界にデビューしています。
彼はロマコメ作品を得意としていると見られがちですが、実はシリアスな映画も多く書いたり監督しているのです。
母親がナチス・ドイツの収容所で殺されたというトラウマがあり、それが映画に反映している部分があるともいわれています。
脚本家として作劇法をきっちり学んで実践し、そして監督としてデビューしていますから、映画の骨格がしっかりとしているのです。
本作ではワイルダーは製作・監督、そして脚本も担当していますが、上記の事から分かるようにシナリオが実に良く出来ています。
本作のシナリオの魅力
この映画のベースはガールズバンドに紛れ込んだ女装の二人の男性楽士と女性歌手の恋愛物語。
しかし、その上にギャングに追い回されるシチュエーションが加わり、加えて女装したことから生まれるドタバタが加味されます。
そしてモンローがバンドの歌手であり、魅力ある歌声を披露するという魅力もプラス。
こうした多層的な構造をテンポよく、またギャグも入れて繰り広げる面白さがラストのオチまでてんこ盛りで観客を満足させます。
まさにビリー・ワイルダーの脚本と演出の魅力が十二分に発揮されているといえるでしょう。
マリリン・モンロー
コメディエンヌとしてのモンロー
映画史に残るセックスシンボルとしてのマリリン・モンローは、「帰らざる河」、「バス停留所」などシリアスな作品もあります。
しかし、なんと言っても彼女の魅力は、
性的魅力に焦点を当てたノワール『ナイアガラ』と、『紳士は金髪がお好き』、『百万長者と結婚する方法』の3つの映画で主役を演じ、
「頭の悪い金髪女性」(”Dumb blonde”)というスターイメージを確立
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/マリリン・モンロー
したことでしょう。
本作でも、そうした「頭のネジが何本か抜けている」ようでいて「愛すべき」キャラクターを好演しています。
そこに彼女しか持ち得ないコメディエンヌとしての魅力が発散されていると見るべきでしょう。
これに、当時コメディアンとして上り調子だったジャック・レモンとトニー・カーティスが加わり、配役を見ただけでも魅力たっぷりです。
モンローの代名詞となった、あの「歌」
モンローは本作中、三曲披露しています。その中でも彼女の代名詞のようになったのが「I Wanna Be Loved By You」です。
モンローが唄う曲はどれもその歌詞が物語にシンクロしていて、使われ方が上手いな、と思わされます。
「I Wanna Be Loved By You」は1928年に作られた古い曲ですが、今やモンローを象徴する曲となりました。
本作でこの歌が登場するシークエンスもまことに状況にフィット。シュガーがジョーに思いを寄せる歌となっているのです。
三人の恋模様の描かれ方
ジョーとシュガー
女装した二人はギャングから逃れてフロリダ行きの列車に乗りこみますが、その瞬間からジョーはシュガーに一目惚れ。
ジョーがフロリダに着くや、お金持ちが着るようなクルーザー用の衣装を持っていました。どこで買ったのでしょう。
どうやら楽団のマネージャー、ビーンストックのトランクを失敬したようです。
それにしてもマネージャーが普段からこんな船乗りの衣装を持っているんでしょうか。