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満月から始まり、満月に終わる物語。
「SING/シング」に登場する、どこか憎めないダメな部分を持った個性的なキャラクターたちは、どのような想いを抱えて歌うのか。
どん底に落ちた主人公バスター・ムーンが這い上がるためには何が必要だったのか。
月のオブジェが暗示するものとはなんなのか。
物語を通して観た者に勇気と情熱をプレゼントしてくれる、この物語を考察します。
SING/シングは満月から始まった
映画はナナ・ヌードルマン(羊の女優)が主演を務める舞台から始まりますが、その時の舞台に輝く月は満月でした。
この舞台を観たことで、6歳の主人公はショーマンになることを決めます。
ナナが歌っているのは、ビートルズの「GOLDEN SLUMBERS」(直訳すると、黄金の眠り・黄金のまどろみ)。
主人公が夢を持つきっかけとなった舞台で、夢の世界に誘う子守唄を歌っているのは映画の始まりの演出としてみるべきものがあります。
ダメキャラたちが歌う本当の理由とは
愛すべき特徴を持ったキャラクターたちには、それぞれの想いがあってコンテストに参加しています。
彼らが困難を乗り越えてまで歌おうとする、本当の理由とは何なのでしょうか。
ミーナ(象の女の子)が歌う理由
家族以外の前で歌うことに極度に恐怖心を抱き、唯一歌声だけで観客を魅了できるキャラクターがミーナ。
日本語版ではMISIAが吹き替えをしていることもあり、キャラクター設定の説得力は素晴らしいものでした。
ミーナは家族をもうっとりさせるほどの歌唱力を持ち、本人も音楽が大好きで、常にヘッドホンをしています。
彼女が歌う理由はとてもシンプルで「歌うことが純粋に好き」というもの。
結局、最後まで人前で歌うことに対する恐怖心を克服したわけではありませんでした。
彼女の歌っているスティービー・ワンダーの「Don’t You Worry ‘bout A Thing」の中ではこう表現されています。
「ふみ出す勇気があればいいの…怖いものはない!」
引用:SING/シング/配給会社:ユニバーサル・ピクチャーズ
大切なのは、恐怖心を克服することより、怖くてもふみ出す勇気を持つこと。
そうすることで、彼女は純粋に「歌うことが好き」であることを表現するに至ったのです。
アッシュ(ヤマアラシの女の子)が歌う理由
アッシュが歌う理由は二転三転します。
「自分たちの音楽を認めさせるため」から、「賞金でレーベルを立ち上げて、自分たちの音楽を世界中に届けるため」。
しかし、彼氏の浮気によってコンビは解散。
最後の舞台では、いざ歌おうとするとギターのシールドを抜かれますが、足踏みで観客に手拍子を求め、歌い始めます。
彼女にこれほどまでに逆風が吹くのは、アッシュのロッカー魂が本物であることを魅せるためだったのです。
歌う理由が二転三転することで、自分の本当の心に気づいたのです。
つまり、歌う理由は「反骨心、魂の開放」だったのです。
ジョニー(ゴリラの少年)が歌う理由
ジョニーが歌う理由は、「本当の自分を生きたい」という理由ではないでしょうか。
歌う事の好きなジョニーは、父親の様な肉食系ではなく歌手として生きていきたいと考えていました。
ジョニーがコンテストのオーディションで歌ったのは、サム・スミスの「Stay With Me」。
「愛さなくていいから、そばにいてほしい」という歌詞は、父親に対する思いを表現しているのではないでしょうか。