でもそれは本当にグリコを使って稼ぎたかっただけなのでしょうか?
身を粉にし働いてもいつまでも底辺の暮らしから抜け出せない現実から、仲間と日の当たる場所へ出ることがフェイホンの望みだと感じます。
そして、歌うことが好きだったグリコに最高の場所を与えてあげることが、フェイホンの夢となったのです。
グリコの飛び立ち
グリコがCDデビューする直前にフェイホンは入国管理局に収監され、アゲハから聞くグリコの活躍にもどこか他人事のように見えました。
しかし強制送還を免れ、自由の身になったフェイホンが見たグリコの看板広告に彼は何を思ったのでしょう?
看板に描かれたアゲハ蝶が青空に向かって舞い飛んでいくように見えたのではないでしょうか。それはグリコの成功を喜んでいる顔でした。
そして、自分が見出したグリコの才能に自負しその旅立ちを見送ったのです。
かりそめの夢の終わり
フェイホンは自分がマネージメントしたグリコが、シンガーとして成功していたことを妬まなかったのはなぜでしょう?
それはフェイホンにとってグリコは希望であり愛するミューズ(音楽の女神)だったからです。
彼女がイェンタウンで歌うことで幸せになることは、フェイホンの夢が叶ったことと同じだったのです。
急転直下の運命
金が全ての街「円都」ではその夢も急転直下で壊れます。偽の金で掴んだ夢は偽だったということです。
偽札データとなっているカセットテープの行方が、流氓王リョウ・リャンキに伝わってしまった原因は情報が売られたからだけでしょうか。
グリコがシンガーとして成功してしまったことで、グリコの娼婦仲間が妬み、金になると思ったからです。
フェイホンが警察に捕まり偽札の出処を聴取され拷問の末に死亡したのは、偽装と知りながら「円」に惑わされた結果です。
そして、グリコは結局このスキャンダルでイェンタウンを出て、元の暮らしに戻ってしまったのです。
蝶の命は儚く短い
フェイホンは死に蝶の寿命のように瞬く間にグリコの夢も終わりを迎えました。しかし、本当にこれですべてが終わったのでしょうか。
アゲハにとってはグリコやフェイホン達との暮らしがバラバラになることは不本意でした。
夢を取り戻そうと再び円を量産するも叶わず、フェイホンの遺体と共に円を焼き払うことでアゲハは芋虫から蝶になろうとしたのです。
リョウ・リャンキのマイウェイ
一万円の磁気データを「My Way」のカセットに仕組んだのは偶然なのか、「My Way」の曲を知っていて好きだったのか真意はわかりません。
しかし、フランク・シナトラの歌う「My Way」の和訳を読むと、リョウ・リャンキの生き様がそのまま歌われているともとれます。