奈緒にとって、自分の身を売るのは最後の手段でもあり、磐音と二度と会えないことを意味していました。
思い人は磐音だけと心に決めますが、実際には祝言をあげることはできません。
奈緒の強い信念と決意は、寒い北風にあおられてもしっかりと地に足をつけた南天のようでした。
奈緒からの手紙に触れた磐音は変わらない奈緒への思いを確認した
佐々木道場に届いた奈緒からの手紙を読んだときも、庭には南天が咲いていました。
磐音は手紙を読むことで、初めて奈緒が今でも自分を思ってくれていることを知ります。
また、自分の気持ちも変わっていないことに改めて気づくのです。
南天は、変わらない愛する気持ちと強い信念を象徴していました。
おこんの心意気にふれた磐音の心情
おこんは、磐音に対してひそかに恋心を抱いていたと思われます。
剣の腕もさることながら、優しくて控えめな磐音の心にひかれたのです。
剣術も、戦術や交渉力にも長けている磐音ですが、生活力がなく女心には鈍感でした。
おこんの気持ちに気が付くはずもなく、自分を支えてくれるおこんに甘えていたのです。
奈緒に心底から同情したおこん
磐音から過去の事実を聞いたおこんは、すぐに奈緒に同情し気持ちを察します。
同じ相手に思いを寄せるからこそ、奈緒の気持ちがわかるのでしょう。
おこんは、奈緒を自分に置き換えて、自分だったら磐音のためにどう行動するかをそのまま伝えたかったのです。
おこんは、生粋の江戸っ子でした。
自分の思いを隠して磐音を支えていこうと決心し、奈緒の幸せは自分の幸せと考えたのではないでしょうか。
おこんの心意気にふれた磐音の心情
理由はどうあれ、小林家や奈緒から見れば磐音は仇(かたき)の身です。
奈緒の兄を殺めてしまったという意識と小林家を断絶に追い込んだ自責の念から、磐音は剣を捨て浪人の道を選びました。
奈緒の顔を思い出せないという磐音。
思い出せないのは顔ではなくて契りを交わした時の自分の気持ちではないでしょうか。
きっと、奈緒に対するうしろめたさが記憶にふたをしていたのでしょう。
奈緒は磐音を待っていると訴えるおこんの言葉に磐音は動揺します。
磐音も本心では愛していると叫びたいほど奈緒への思いに胸を痛めていたはずです。
おこんの言葉は、磐音が奈緒への愛を開放するきっかけをつくってくれました。
奈緒の花魁(おいらん)道中と高額な身受け金
奈緒の花魁(おいらん)道中は、朱に染まったきらびやかな世界でした。
磐音は奈緒の振る舞いの中に自分への愛を感じたのです。磐音は奈緒との愛を貫くことを決心します。
花魁(おいらん)道中は寒空に耐える南天
奈緒は、生活苦から心ならずも花魁(おいらん)白鶴太夫として生きていく決心をします。