「胸ん中の剣が大事なんだよ!」
引用:バケモノの子/配給会社:東宝
この「心の中の剣」がこの物語のキーワードですが、熊徹の心の中には剣があるから言えたことです。
「心の中の剣」というワードはクライマックスでもでてきますが、熊徹が一人で修業し強くなってきたことに通じます。
つまり、自分を信じる気持ちや諦めない気持ちで挑む「強さ」が心の中の剣のことではないでしょうか。
学ぶは真似る
九太は熊徹との暮らしで迷いがあると時々母の幻の声を聞きます。
なりきる…なったつもりで…
引用:バケモノの子/配給会社:東宝
「学ぶは真似るところからはじまる」とよく聞きますが、九太は熊徹の動きを忠実に真似て上達したのです。
九太が炊事するシーンがありますが、これも母親との二人暮らしの中で見よう見まねで身に付けたことなのでしょう。
誰にでも潜む心の闇
楓は誰の心にも闇は存在しているから特別なことではないと言います。しかし誰もがその闇に支配されるわけではないのです。
闇に支配されそうになった時に楓には自分を信じる気持ちがあり、負けそうになると腕に巻いた栞の紐を見て我にかえれました。
九太は自分の心の闇の正体を徐々に知り、それに打ち勝つために必要なものを知ることになります。
一郎彦の心の闇
一郎彦は猪王山の長男として大事に育ててもらいながら、いつまでも父親と同じ牙が生えず鼻も伸びないことで違和感を抱きます。
そして、渋天街では悪しき闇を生むものと忌み嫌われていた人間の姿と自分が似ていることに嫌悪したのでしょう。
九太の心の闇
蓮には母親を亡くし父親が迎えに来なかったという経験が、親に見捨てられたという憎しみになったでしょう。
そして、九太は人間の子でありながらバケモノに育てられ「人間」と「バケモノ」の間で心が揺れ「自分は何者なのか?」と疑問を抱くのです。
九太は渋谷の街で大人に疑心暗鬼を抱き嫌っていた、子供の頃の心の闇を見つけ困惑をしたのでした。
二人共、何を誰を信じてよいのかわからなくなり、誰にも理解されない孤独と苦しみにもがきはじめていました。
ハーマン・メルヴィルの「白鯨」
九太が図書館で初めて手にし愛読書となった、ハーマン・メルヴィルの「白鯨」に関する考察について楓はこう話します。
鯨は自分を映す鏡で、主人公は鯨と戦うことで自分自身と戦っていたのだと思う。
引用:バケモノの子/配給会社:東宝
「白鯨」は鯨に足を食いちぎられた主人公が鯨に対しての復讐心に執着し、長い歳月をかけて鯨を探し続けるお話しです。
鯨を襲撃する主人公に抵抗し反撃する白鯨との戦いは、復讐という心の闇を持った主人公が死闘の末に海底に引きずり込まれて終わります。
白鯨は主人公の復讐心を飲み込んでしまったのでしょうか?「鯨」は憎しみの象徴として二つ目のキーワードになります。
鯨になった一郎彦の意味
九太は一郎彦の心の闇は自分の闇と同じだと悟ったので、一郎彦と戦い共に消えることで渋天街を救う覚悟をしていました。
つまりこの時の九太はまだ、闇との戦いに勝つという確固たる信念までには至っていなかったのです。
一郎彦が鯨になった真意
一郎彦が鯨の姿を借りて九太を九太を襲うシーンは「白鯨」に出てきた復讐心で鯨を追いかける主人公のようです。