この写しの存在を黙っていたセルジュは殺されてしまったわけですが、彼が守り抜いたマダムDの意思はグスタヴに届きました。
全財産を相続したグスタヴは大金持ちに。一方あの手この手策略を練った実の息子ドミトリーは何も受け取れないという因果応報な結末を迎えます。
名実ともにホテルを手にした
今までオーナー不明だったグランド・ブタペスト・ホテルですが、まさかのマダムDがオーナーだったことが判明します。
オーナー権がグスタヴに譲渡されたことで、彼が名実ともにホテルを手にしたことになったのです。
このホテルは彼の魅力で人気になったのですから、納得の遺贈だと思われます。
これで「少年と林檎」の絵をホテルに飾ればマダムDがずっと見守っていてくれたでしょうが、グスタヴの命がそう長く保たなかったのが残念でなりません。
マダムDの血族たち
血族の中でマダムDの遺産をあてにしていた人は多かったはずです。
当初の予定通り息子に遺産が渡れば、この一族は守られていったと思われます。
しかし全財産がどこの馬の骨とも知らない男に渡された結果、一族は金銭的自立を強いられることになるでしょう。
そして遺産をめぐって多くの人を殺害したドミトリーは、その罪を償わなければなりません。
何もしなければ自分の手に遺産が入ってくるのに、どうして馬鹿なマネをしたのか。
人間の欲深さを1番持ち合わせたキャラクターであるのは間違いないでしょう。
ホテルに残された思い
マダムDの財産を受け継いだグスタヴが死に、全てがゼロに譲られましたが、その中でゼロが最後まで手放さなかったのがホテルでした。
ホテルにはどんな思いが残されているのでしょうか。
ここにはゼロが慕ったグスタヴとの思い出もありますし、アガサとの幸せな日々も詰まっています。
激動の時代に翻弄され、大切な人を多く失ったゼロが唯一残しておきたかったのがホテルというわけです。
それはただのいい思い出を残したいという気持ちではなく、守り抜いた文化や思想を守りたいという思いの方が強かったのではないでしょうか。
社会背景を引き合いに出して考えると、ナチスに抑圧されたユダヤのアイデンティティを何かの形で残す意味も含まれているように見えます。
少年と林檎の絵
いざという時のために作成した遺言によって、「少年と林檎」の絵をグスタヴへの遺産として残したマダム・D。
なぜ彼女はこの絵をチョイスしたのでしょうか。
絵はオトリ
この絵自体も高価だったと思いますが、本当にマダムDがグスタヴに譲りたかったのは絵ではありません。
彼女は絵の裏に隠した手紙を確実に彼に渡したかっただけです。
その目的を達成するためには安い絵は不都合だったと思われます。それはなぜでしょうか。
1番高価な絵を譲った理由
「少年と林檎」の絵自体が本当に譲りたかったものではないのなら、そんなに高価な物を譲らなくてもよかったのでは?と思ってしまいます。