それはシンクロのパートナーを失って絶望した彼女だからこそ、心の重要性を感じていたのだと思われます。
しかし現実問題、素人がシンクロをやるにあたって精神面のケアだけでは上達するはずがありません。
そこでアマンダが登場する意味ができるのです。
スパルタ指導のアマンダ
体育会系というよりパワハラ全開の指導をするアマンダは、デルフィーヌの指導に慣れていたおじさん達には地獄だったでしょう。
ですがスポーツを始めるには基礎となる体づくりは必須です。
厳しい基礎練習は彼らの意識さえも変え、ダメな大人からの脱却を図ることができたのでしょう。
中年が直面する危機
様々な悩みを抱えているのは彼らだけではありません。
現実社会でも「ミッドライフクライシス」という中高年特有の危機が問題になっています。
人生も折り返し地点を過ぎた中年が直面する危機とは具体的にどのようなものなのでしょうか。
やり直しがきかない
「若い時の失敗は買ってでもしろ」という言葉がありますが、それはこれから先の人生が長いからこそ使えます。
ですが中年になり、人生に限りがあることに直面すると、これまでの自分の人生を振り返る機会が多くなるはずです。
そして彼らは思います。「このままでいいのか?」と。
そんな想いがベルトラン達の中にもあったのは当然で、だからこそシンクロという新しいチャレンジに心惹かれたのだと考えられます。
チームでの達成感
個が尊重される現代では、横の繋がりが弱くなってきているように思います。
個人で活動し個人で稼げる良い時代ではありますが、他者との接点を失って悩んでいる人も出てきているのです。
何かを集団で成し遂げる達成感を得る機会が減り、モヤモヤした不安をベルトラン達は抱えていました。
そんな彼らだからこそ、シンクロに真剣に取り組む気になったのでしょう。
そしてベルトラン達を通して、社会で生きにくくなっている人達へエールを送ることを目的の1つとしている作品なのだと解釈できます。
中年の危機を回避する方法とは
中年の危機が訪れる大きな原因は不安です。
老いを意識し始め、このまま人生が終わっていくのを黙って受け入れるしかないのかという疑問が頭から離れないのでしょう。
彼らの人生に足らないのは達成感であり、ベルトラン達がプールに足を運んだのも不安を穴埋めしたかったからに違いありません。
仮にシンクロの世界選手権で優勝しなくても、彼らは達成感を得られたはずです。