ヒーロー・ヒロインの役割が「世界を変えること」ならば確かにミアは自身の世界を変身によって変えました。
そしてだからこそその報償として最後にマイケルとのキスという祝福が待ち受けていたのです。
母が事実を隠し続けてきた理由
ミアの紆余曲折を丁寧に描いてきた「プリティ・プリンセス」ですが、母が事実を隠し続けてきた理由は不明です。
一体何故母はミアが王女となるべき人であることを黙秘し続けていたのでしょうか?
父との離婚と死別
一つの解釈としてはミアの亡き父との離婚と死別を忘れていたのではないでしょうか。
かつて父と愛し合っていたとはいえ母はあくまでも自由奔放な画家です。
元々家庭や子育てへの興味・関心もそこまで深くはないようにも見えます。
人間嫌なことは忘れるように出来ているもので、気まぐれな母なら忘れていても不思議ではありません。
普通の生活を知ること
そしてもう一つ考えられるのは王女になる前に一般市民としての暮らしを知って欲しかったのではないしょうか。
これはどちらかというと祖母の意向でしょうが、祖母は母よりもミアの教育に強い関心を持っていました。
高貴な身分として生まれずっとその世界で生き続けると、ややもすれば外の世界を知らない井の中の蛙になりがちです。
そういう狭い視野のまま生きて欲しくないから、まずは人並みの世界と苦労・幸せを一通り経験して欲しかったのでしょう。
その方が乳母日傘で育つよりもミアにとって大きなプラスになると踏んでいたのではないでしょうか。
日記帳を渡した祖母の想い
祖母がミアに日記帳を渡したのは王女としての覚悟と決意を身につけて欲しかったのではないしょうか。
これまで述べてきたように、ミアは自分に全く自信が持てない自己肯定感の低い子でした。
そしてまた王女としての教育を受けても自身の軽薄さからスキャンダルを起こしてしまってもいます。
つまり三週間王女としての英才教育を施して尚ミアはまだ王女になる方向には行けなかったのです。
だからこそ今度は亡き父の強い迫力のある言葉で間接的にミアを鼓舞し、引っ張り上げたかったのでしょう。
小さな日常の積み重ねが大きな力を生み出す
ここまで、「プリティ・プリンセス」について物語の面から細かく考察し掘り下げてきました。
本作はその煌びやかなタイトルに反して、物語の展開自体は非常に地味です。
ミアが高貴な身分であるというファーストインパクト以外はラストまでは本当に細かい変化しかありません。
しかし、何か大きな力や物事を生み出していくとき、何よりも大切なのはその日常の積み重ねなのです。
そこを凄く丁寧にやりきったからこそ本作はその後もシリーズが作られ続ける名作となったのではないでしょうか。