出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01N1WVYVY/?tag=cinema-notes-22
イタリアを代表する映画監督ピエトロ・ジェルミの、代表作にして映画史においても不朽の名作「鉄道員」。
第二次世界大戦後のイタリアに生きる庶民、ある一人の初老の鉄道機関士アンドレアの家族の日常を彼の幼い息子サンドロの目線で描いています。
家族という「社会」があたりまえにあるのではなく、あるバランスのもとに保たれていることをすごく感じさせてくれます。
父アンドレアは、サンドロにとっては英雄的存在で姉や兄からは厳格さ、律義さ、頑固さが嫌で敬遠されている存在でもありました。
そんな昔気質な父が大黒柱を成すアンドレア一家でも、朗らかで優しい献身的な母サーラのおかげで平穏な日常を過ごすことができている。
そんな構図がうまく描かれている作品です。
この作品が、名作たる理由や監督の想い、そして作品をさらに深いものにしている音楽について解説、紹介をしていこうと思います。
「鉄道員」の魅力
一見すると平和で平凡な家庭
どこの家庭にも似たり寄ったりですが、なにかしら問題を抱えているもの。
それでも、なんとなくうまくバランスを保ちながら生活をしています。
この「鉄道員」のアンドレア一家でもそれは同じで、劇中のキーワードとなっています。
では、どのようなキーワードが隠されているのでしょうか?
大きく分けて以下のようなことが挙げられます。
- 酒癖が悪いが、威厳のある父
- 寛容で理解のある母
- 思いもよらない妊娠で望まない結婚をすることになった姉
- ニート生活を続ける兄
- 成績の悪い弟
末っ子サンドロが家族を観察して、彼の目線を通して視聴者にも伝えられてきます。
サンドロの喜怒哀楽を感じることで、私たち自身の気持ちにも気づかされる、それがこの作品の一番の魅力でしょう。
目をそらせない現実が見どころ
この映画での大きな見どころを形成しているのが「仕事でのトラブル」や、「人間関係のトラブル」、「家族の問題」。
それらがあるきっかけで狂っていくさまが描かれます。
観客を世界観に引っ張り込むのに成功している1つの理由です。
おそらく、サンドロのような視点で我が身を振り返ると具体的に選択肢を選ぶことができると思えるでしょう。
しかし人というのは、自分事となると途端にわからなくなってしまうもの。
そんなことを観終わった後に考えてしまう作品なのです。
これらを、監督自身が計算をして緻密に作っているところがこの作品を名作にできた理由だと考えられます。
監督が不器用な父アンドレアに投影した思いとは?
父アンドレアを演じているのは監督であるピエトロ・ジェルミですが、どのような想いを自身と投影しているのか、考察していきましょう。
「父親」としての在り方
父親の威厳を失ったアンドレア。
それに起因し、父親に対しての不満が様々な形で噴出したことがこの話のきっかけとなっています。
しかし「プライドの持ち方」というのが、いかにその人となりに影響を与えているかというのが表現されます。
母は強しとはよくいったもので、女性の場合「母」という生物的根幹な部分にプライドがあるのに対し、父というのはどうでしょうか。