どうしてそこまで神野達は写真を危惧したのでしょうか?
神野の妹
騙された振りをしていた神野が唯一驚きの表情を見せたのが木村と神野の妹の仲が進展したことでした。
これは数少ない神野の弱点といえるもので、シスコンとまでは行かなくとも影響力のある人です。
勿論アリバイ作りという側面はあるにしても、下手を打つと今度は妹が狙われかねません。
だからこそ神野は何が何でも妹だけは守りたいという思いが自然に出て、写真を危惧していたのでしょう。
化かし合い
そして神野の妹が決定打として使われたのは学校の車の中で北沢に妹の写真を見せたときでした。
この時北沢は写真の女性が妹だと気付かず、そのせいで神野に島崎を騙る偽物だと気付かれてしまうのです。
正に化かし合いのシーソーゲームなのですが、ここから見えてくる一つの事実があります。
それは北沢が強そうで脆い人、そして逆に神野が脆そうで強い人だということです。
北沢は内面をクリティカルに突かれると案外脆く、自身の弱さを認めることが出来ません。
だからこそその弱さをアダルトショップや大人の汚い行為といったことで覆い隠していたのです。
一方の神野は騙されやすく飄々としていますが、実は一発で物事の本質を見抜く天才ではないでしょうか。
木村に好き勝手されても怒らないのもそうした大物の風格故常に自然体でいられるのです。
一緒に帰ろう
用意周到などんでん返しの後、神野は美紀と共に学校のグラウンドでこういいます。
一緒に帰ろう
引用:アフタースクール/配給会社:クロックワークス
たった一言、特別な台詞でも何でもないのにどうしてこうも胸を打つのでしょうか?
それは神野と美紀の物語が「大事な物を取り戻す物語」だったからです。
美紀はヤクザの子を身ごもって生んでしまうほど、やっていることはかなり危険度の高いものでした。
ある意味では北沢ですらも知らない本物の大人の地獄を見ていることになります。
神野はそれさえも受け止めた上で一緒に帰ろうと、美紀にはまだ帰る場所があるといったのです。
それは学校の先生としてどんな生徒も否定せず受け入れる神野だからこそ出来たことでしょう。
まとめ
「アフタースクール」という作品はそのどんでん返しのトリックが巧みすぎるに目を奪われがちです。
しかし、本当に大事なことはかつて果たせなかった同級生との約束、そして大切な物を思い出す物語でした。
だからこそパッケージがパズルピースであることにもまた二つの意味があります。
一つはどんでん返しとしての物語のパズルピース、もう一つが木村、神野、美紀という三人の心のピースです。
この王道の物語を数々の思い違い・すれ違いを交え錯覚させていきながらもラストシーンで見事に集約させました。