人間とは不思議なもので、顔が下を向いていると気が沈み、上を向いていると気分も前向きに変化します。
ですから携帯を高い場所に置いて、意図的に顔を上に向かせるという、一種の罠を仕掛けていたのだと考えられます。
2人は一心同体
いくらトムの携帯が戸棚の上に置いてあったからといって、それを目にするのはトム自身です。
ケイトがトムの携帯を毎日見るわけではないのですから、この作戦は無駄なように感じます。
ですがここでトムの正体が効いてくるのです。トムとケイトは心臓で繋がっています。
つまりトムの気持ちが上を向けばケイトの気持ちも上を向くはず。
そんなトリックを考えついた彼が、ケイトのために携帯を持ち歩かずに戸棚の上に置いたのでしょう。
この携帯を置く場所ひとつとっても、彼がケイトに懸ける想いの強さが伝わってきます。
ケイトが不幸だった理由
ショップ店員の仕事にも気分が乗らず、歌手になるためのオーディションにも落ちまくるケイトは、自分が不幸だと感じていました。
なぜこんなにも自分に不幸ばかりやって来るのか疑問だったと思います。それには彼女の置かれた環境も影響していたようです。
複雑な家庭環境
ケイトは生粋のイギリス人ではなく、旧ユーゴスラビアからの移民でした。
希望を持ってイギリスに来たのでしょうが、思ったような未来が開けず塞ぎ込んでいたことが分かります。
そのため母親を疎み、自分の過去から目を逸らすことをしてきたのでしょう。
自ら不幸になっていく
自分で自分を不幸だと思うと、何でもない事さえも「自分はツイてない」と感じてしまうものです。
鳥の糞が落ちて来ても、本人の捉え方で180度変わってしまうことが、トムとの初対面で描かれていました。
同じ現象を目の当たりにしても、正反対の感想が出るのは、本人の意識の違いによるものだと思われます。
ですからケイトが「不幸」と呼んでいる現状は、彼女の心の中を映しているだけで、現実とは関係ないのではないでしょうか。
ならば彼女が不幸な原因は自身の思い込みにあるはず。この答えにたどり着かない限り、ケイトはずっと自分を不幸にし続けるのです。
トムが現れた目的
自分で不幸の種を探しているようなケイトの前に現れたのが、彼女と正反対の性格を持つトムでした。
謎多きトムは何を目的にケイトに近付いたのでしょうか。
救いの手
トムの心臓がケイトの中に入っているのですから、彼女の心が弱っているとトムも元気がなくなるのではないでしょうか。
それにせっかく心臓をあげた相手がウジウジしていたら、提供する側も嫌だと思います。
せっかくなら大切に心臓を使ってもらいたいし、幸せになって欲しい。
そんな願いをトムは持っていて、いつになっても幸せを見つけようとしないケイトに救いの手を差し伸べたのでしょう。
あえてトムが答えを出さない
トムがケイトから愚痴を聞いても、同意も否定もしなかったのには、何か理由があったのでしょうか。
きっとトムならば彼女の悩みをスパッと断ち切ることくらいできたはずです。