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【キャビン(ネタバレ)】結末の意味を徹底解説!様々な作品のオマージュをいくつ見つけられた?科学者の目的は果たされたのか

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B00TK3TPOU/cinema-notes-22

本作『キャビン』を観た人の多くは、いろんなホラー映画をパロディにしただけのB級ホラー映画だと思ったのではないでしょうか。

あるいは、いくつもの伏線が回収されず謎の闇組織も幼稚な設定だったことから、ただのおバカ映画のように感じたのかもしれません。

一方で、映画批評サイト「Rotten Tomatoes」の支持率は90パーセントを超えています。

世界一辛口で有名なトマトのレビュアーたちが、ただのおバカ映画を賞賛するはずはありません。

『キャビン』は一見おバカなホラー映画でありながら、その奥に隠された構造を秘めているのです。

ここからは、その1つ1つの意味を私なりに解釈してゆきます。

映画の基礎となるメタファー

本作はホラー・ミステリーですが設定が弱いため、多くの鑑賞者は最後に不満を覚えるでしょう。

しかし、この映画は根本的にパターン・パロディ・メタファーといった抽象概念によって成り立っています。序盤にある代表的なものを解釈してゆきましょう。

大気中のバリアの意味

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抽象概念で成り立つ『キャビン』は、「さぁ楽しませてくれ」と受け身で観ているだけではほとんど何も与えてくれません。

自ら1つ1つのシーンに隠れた意味を見出そうとしなければ楽しめない映画になっているのです。

例えば、作中には大気中に見えないバリアが張り巡らされています。

大学生5人組がバケーションのために森の奥に入った際、大空を舞う鳥がそのバリアにぶつかって落下します。

何なのか最後まで明かされないので、多くの鑑賞者は不満に思うでしょう。しかしそのバリアは設定ではなくメタファーなのです。

その後、5人組の1人・カートが森から脱出しようとバイクで飛びますが、そのバリアにぶつかって死にます。そこで大体の意味がつかめます。

カートは体育会系の男であり、ほとんどのホラー映画では必ずといっていいほど生き残れないキャラなのです。

つまり、そのバリアは「ホラー映画の壁」と読み取ることができます。

先に鳥がバリアにぶつかったのは、映画全体がホラー映画パロディの仮想世界であることを示しているといえます。

映画のキャラと鑑賞者の関係性を映すマジックミラー

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大学生5人組が森の中のキャビン・山小屋に入ってまもなくマジックミラーが見つかります。

ホールデンが部屋の古い絵をどけると鏡があり、それを通して隣室にいるヒロインのデイナが見えます。

マジックミラーなのでホールデンはデイナを見れる一方、彼女は自分の姿しか見れません。

そこで彼女は服を脱ごうとしますが、誠実な彼は壁を叩いてそれを止めます。このマジックミラーも映画を包み込む1つのメタファーになっています。

大学生たちは闇組織によって典型的なホラー映画の世界に閉じ込められてモニタリングされています。

そのため一種の覗き見ができるミラーは、彼らを監視する謎の科学者たちだといえます。

森の奥でジュールズとカートが愛し合う場面では、大勢の科学者たちはモニター室でそろってそれをじっと見つめます。

そこで彼らはホラー映画の鑑賞者にも重なります。つまり、マジックミラーは映画の登場人物と鑑賞者の関係性でもあるのです。

展開としてのホラー映画パロディ

映画には深いメタファーがある一方で、典型的なパロディも数多くあります。展開としてのパロディを見てゆきましょう。

ヒロインの下着姿でレトロな気分に!?

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清純なデイナ・淫乱なジュールズ・体育会系のカート・頭脳派のホールデン・間抜けなマーティ。

このように映画はメインキャラの役割分担からホラー映画の典型になっています。

また映画冒頭のデイナのパンティ姿は、80年代のアメリカ製ホラー作品を思い出させます。

当時のホラー映画では大勢の女の子たちが平然と下着姿で出てきたものです。このサービスショットで一気にレトロな気分にさせられます。

大学生5人組がキャンピングカーで森に遊びにゆくという基本設定もホラー映画の定番。

森に入る前に寂れたガソリンスタンドで不気味な男が出てくるのも、これからの惨劇を予兆させるホラー映画のありがちな仕掛けです。

一致団結というホラー映画の最たるタブー

山小屋の地下室で古い日記を見つけたヒロインがラテン語の呪文を唱えると死人たちが甦るというのもゾンビ映画のお約束です。

ラテン語というのがツボであり、アメリカではオカルトとラテン語が常に堅く結びつけられています。

ジュールズとカートが山中で愛し合っている最中にゾンビに襲われるのも、『13日の金曜日』の大昔からあるお決まりの演出です。

その後、ゾンビたちが他のメンバーがいる山小屋を襲うのも同様。

途中からカートは一致団結してピンチを乗り切ろうと言い出します。これにその様子を見守る闇組織の科学者たちが大騒ぎしたのには笑えます。

勝手気ままな個人行動で1人ずつ殺されてゆくのがホラー映画の鉄則ゆえに、その発想はタブーなのです。

まもなくカートは組織の洗脳テクによってその考えをすぐに変えられてしまいました。

オマージュにあふれたホラー映画人気キャラ総出シーン

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終盤、闇組織に潜り込んだデイナとマーティは、不気味なモンスターが入った無数のガラスの小部屋を発見します。

ちなみにこれは映画『キューブ』へのオマージュです。

デイナが小部屋のロックを解除したことで、ホラー映画の人気モンスターたちが一気になだれこんできます。

そこからのオマージュにあふれた一連のシーンは、ホラー映画マニアにとって至福のときといえるでしょう。

顔に穴の開いた少女は『くるみ割り人形』のシュガープラムの精をアレンジしたもの。

他にも『シャイニング』のふたごの姉妹や『大アマゾンの半漁人』の半漁人も出てきます。

この総出シーン以外で最も印象的なモンスターはやはりゾンビです。

これはホラー映画の金字塔『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』のゾンビをそのまま模倣しています。

日本人として一番気になるのは、闇組織の京都支部にあるモニター画面で出てくる女の子のお化けです。

正式名はKIKOというそうで、貞子などJホラーの少女妖怪のパロディなのだそうです。

闇組織の科学者たちの狙い

物語の核心には、大勢の科学者たちが集う闇組織があります。

それは人類を救済するために若い生贄を「古き者」と呼ばれる悪魔に捧げることを目的としています。

しかし、深読みすればそこには別の意味も読み取れるのです。

理解しがたい組織の活動内容

2013年映画パンフレット キャビン CABIN ドリュー・ゴダード監督 クリスティン・コノリー クリス・ヘムズワース

闇組織が具体的にやっていることは不可解極まります

彼らは若い5人組をピックアップして自然豊かな実験場に行かせ、ホラー映画の典型的なシナリオに従うように操作します。

しかもそれはアメリカ・京都・ブエノスアイレスと世界規模で実行されています。

最後に処女が1人生き残ることが勝利のサイン。それで「古き者」を満足させて人類滅亡を防いでいるというのが組織の活動概要です。

一見、B級映画のおバカ設定にしか見えませんが、この闇組織は1つのメタファーになっているのです。

腐敗したホラー映画業界

闇組織はヒット目的で同じようなホラー映画ばかりを作る腐敗した映画業界だとも見れます。

そうなれば人類を破滅させる「古き者」とは同じ映画ばかりをを好む一般の映画鑑賞者だといえます。

一方で、作中では日本の闇組織がアメリカをしのぐ存在だとみなされています。

それもJホラーというジャンルができるほど、日本でも同じようなホラー映画が量産されていることへの皮肉でしょう。

ホラー映画という点で、日本はアメリカと並んで世界中に同じような商品を大量生産している国だといえます。

しかしこの映画でその流れは止まります

最後にヒロインのデイナが処女として最後の生き残りになるのを拒んだとき、闇組織の科学者たちの目論見は完全に崩れるのです。

不可解な結末を徹底分析

映画は「古き者」が暴れ回ることで悲劇的な結末になります。しかし、よくよく考えればホラー映画の未来にとってそれはハッピーエンドなのです。

ホラー映画ファンの感情を反映した古き者の怒り

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映画の最終盤、闇組織のディレクター・総監督として女優シガニー・ウィーバーがサプライズ登場します。

彼女はデイナに処女として最後に生き残るため連れのマーティを殺すように仕向けます。

『エイリアン』シリーズでお馴染みのウィーバーは、古典ホラーの女帝ともいえるこの役所にピッタリです。

しかし、デイナがマーティを殺さなかったことで「古き者」は目覚め、大地にその大きな拳を振り下ろします。

その怒りはそのままホラー映画の鑑賞者の感情を反映しているといえます。

なぜなら清純なヒロインだけが最後に生き残るというのが、ホラー映画の鉄則だからです。

つまり「古き者」たる私たちはデイナがホラー映画のヒロインらしく振舞わなかったことに腹を立てたのです。

聖なる処女が悪魔を倒すクリシェ

ホラー映画の鉄則には、人間の心理も深く関わっています。

『キャビン』でも淫乱女ジュールズは早々に死ぬ一方、清純なデイナは最後まで生き残ります。それは私たちの秘められた願望を投影しています。

西洋文明においては宗教上のピューリタニズムの価値観に沿ったものであり、他の文明でも清純さは女性の最大の美徳になっています。

そこから聖なる処女が悪魔を倒すというホラー映画のクリシェが生まれたのでしょう。

それに反することはホラー映画最大のタブーであり、だからこそデイナは「古き者」の大いなる怒りを買ったのです。

しかし、それはホラー映画の希望となりうるラストでもあります。

最大のタブーを破ったことで、この映画は新たなホラー映画に続く入り口を作ったといえるでしょう。

メタフィクションとしての『キャビン』

古くはフェリーニの『8 1/2』などがそうですが、この『キャビン』も映画についての映画・いわゆるメタフィクションになっています。

『キャビン』の監督たちはこの映画で一体何をしたかったのでしょうか。

商業的なホラー映画業界への復讐

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監督のドリュー・ゴダードはTVドラマ『ロスト』の脚本家としても知られ、本作で一気に有名になりました。

監督を始めとしたスタッフがやりたかったことは映画の中に色濃く反映されています。

映画製作の発火点は、まちがいなく同じ映画ばかりを作る商業的なホラー映画業界への怒りにあったでしょう。

そんな業界をこらしめるには一体どうすればいいか。そこで彼らは金儲けの道具として消費されるモンスターを復讐役に抜擢。

そしてどのホラー映画でも大変な目に合う清純なヒロインを選んだのではないでしょうか。

また『キャビン』ではヤク中の間抜けなマーティが最後まで生き残るのもポイントです。

大抵のホラー映画では真っ先に殺される哀れなキャラだからこそモンスターたちと共に業界への復讐役に大抜擢されたのではないでしょうか。

腐敗した業界への復讐という目で見れば、映画のクライマックスは清々しいハッピーエンドに感じられるはずです。

ホラー映画を超えた輝き

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ホラー映画のオマージュやメタファーを基礎にしたこの映画は、何度観ても味わい深いものになるはずです。

ほとんどのシーンには何らかの皮肉や意味がふくまれていて、毎回観るたびに何らかの発見があることでしょう。

考えれば考えるほど面白くなる本作はホラー映画として極めて変わった作品であり、メタフィクションとしてジャンルを超えた輝きを放っています。