功太と歌子の場合その打ち解けていく過程すらすっ飛ばしていきなり結婚に持って行っています。
一見突拍子ない展開ですが、しかし結末から逆算するとこれはある種の「前祝い」ではないでしょうか。
日本には古来豊作音頭・お祭りなど物事が上手く行くように前祝い=予祝をかける文化があります。
功太と歌子はこの時点で自分たちの将来を先に叶ったことにしていたのでしょう。
功太という人間の空虚さ
そんな功太と歌子の大きな転機となったのが大神という因縁の子が絡んできた時です。
文化祭を前にお互い忙しくなり心の距離が出来た二人は大神の守秘義務をめぐって言い争いとなります。
その時、歌子がとうとう功太という男の核心を突いてしまうのです。
警察官じゃない功太くんはどこにいるの?
功太くんの考えてることが分からない。
私たち結婚した意味あるの?引用:PとJK/配給会社:松竹
表面上は歌子が凄く我儘なようですが、しかし功太は警察官である前の人間味が希薄でした。
彼が何も言葉を返せなかったのは期せずしてそういう自身の空虚さを自覚させられたからです。
トラウマの再現であった文化祭
そんな功太の空虚さが裏目に出たのが文化祭で起こった大神と不良グループとの暴力事件でした。
功太が歌子を庇って刺される場面は父の殉職の再現ですが、ここでも功太は歌子から核心を突かれます。
何でもっと自分のこと大事にしないの?
引用:PとJK/配給会社:松竹
そう、功太に一番足りなかったもの、それは「自分」、もっといえばアイデンティティーでありました。
功太がこの時涙を流したのは決して歌子に振られ指輪を返されたからではありません。
自分に欠けているものを歌子が教えてくれたからであり、ここで初めて功太という男に「芯」が芽生えました。
功太が歌子を通して学んだもの
功太が歌子を通して学んだものは「自己犠牲ではない警察官を目指すこと=自分を大切にすること」でした。
彼はその後歌子の高校で講習会の時、生徒からのある質問にこのように答えました。
警察官の仕事は愛する人のために死ぬことではなく、愛する人と共に生きていくためにあるのだと今は思っています
引用:PとJK/配給会社:松竹
そう、ここで改めて功太という真の警察官が誕生したといえるのです。
警察官というとどうしても自己犠牲・殉職という後ろ向きで危険なイメージが付きまといます。
しかし、功太はあくまで功太であって決して父親にはなりえない。
ここで初めて功太は自分と向き合い、そして歌子と真正面から向き合うことが出来たのです。
歌子との復縁
かくして真の警察官として復活した功太は遂に歌子と復縁するに至りました。
何故ふたりは一度分かれたにも関わらず復縁できたのでしょうか?
予祝の力
まず一つには上記した予祝=前祝いの力が挙げられます。
二人は擬似的な形で結婚したことで、前祝いとして既に自分たちの将来を実現したことにしました。
また、形だけではなく文化祭前に歌子が警察官の制服に抱き着きキスをしたのも大きいでしょう。