それは公開当時一眼レフカメラやミラーレスカメラが一般層への普及があったことと重なります。
このような時代の偶然性もあって、アンドリューとカメラはそのまま本作の象徴にまでなりました。
初体験の失敗
アンドリューが暗黒面に陥った一番の転機、それは酒のせいで折角の初体験を失敗したことでした。
彼は余りにも大人の階段を早く駆け上がろうとしすぎてしまったのです。
酒と女は男をダメにするといわれますが、この挫折が只さえ繊細な彼の心をどれだけ傷つけたでしょう?
彼はこの瞬間に「男」としても「人間」としてもプライドをズタズタにされてしまったのです。
超能力を手にして一足飛びに有名になろうと足下がお留守になってしまっていることが伺えます。
アンドリューがカメラを回し続けた理由
超能力を手にしたアンドリューはそれでもカメラだけはずっと捨てずに回し続けました。
果たしてそれは何を意味していたのでしょうか?
アンドリューの半生の記録
「クロニクル」という英単語の意味と併せるとアンドリューのカメラは彼の半生の記録です。
彼がどのように生きてきたかが、そのカメラで切り取られた景色の向こうに見えてきます。
映るのは殆ど暗い日常生活ですが、このカメラで歴史の生き証人であると示したかったのかもしれません。
今ではYouTubeをはじめ誰しもがカメラとパソコンさえあれば簡単に動画を作り記録として残せます。
そういう意味でも本作はアンドリューという青年のモキュメンタリーなのです。
ヒーローになりきれない傍観者
カメラを回し続けることはその時点でアンドリューがヒーローではない観察者だという意味にもなります。
彼は主人公でありながら同時にどこか世の中に対して冷めた視点を持っていました。
いじめっ子達にやり返す所は一見ヒーローらしいのですが、これは復讐でありヒーローの行為ではありません。
だからこそ一時的に人気者になっても、かえってスティーブやマットと亀裂が走るのです。
視点と主人公の交代
アンドリューが遂に終盤ではスティーブの喪失を臨界点として力を暴走させていきます。
彼はこの瞬間に完全に悪になり、観察者ではなくなっていました。
ここで主人公はアンドリューからマットへとスムーズに交代しています。
この視点の切り替えが鮮やかに行われているのも「クロニクル」の特徴でしょうか。
アンドリュー中心で進んでいると見せかけ、実は違う視点での統制も働かせていました。
マットのその後
完全に理性を失ったアンドリューはマットの手で殺されます。