どこまでがノーマン本人でどこからが母なのかという区分も意味を成しません。
虫も殺せないなどといいながら最後に見せた悪魔の笑みがそれを如実に物語っています。
彼はきっと逮捕されてももうどうにもならない所まで来てしまったのでしょう。
数々の死体を埋めた苦悩
ノーマン・ベイツは自身が経営するモーテルや家にやって来た者を数々殺してきました。
本編ではマリオン・クレインと彼女の行方を追う私立探偵アーボガストも含まれています。
それらの死体を埋める際に生じた彼の苦悩とはどのようものだったのでしょうか?
マリオンとの共通点
あらすじに沿って見ていくとジャネット・リー演じるマリオンとはある共通点がありました。
それは 良心の呵責から生じた疑心暗鬼です。
マリオンはサムとの結婚に目が眩んで会社のお金4万ドルを横領したことへの後ろめたさがありました。
対するノーマンも母を殺してしまった事実に後ろめたさを感じ、後に引き返せなくなったのです。
二人とも人として一線を超えてしまったことから疑心暗鬼を生じてしまいました。
パーソナルスペース
二つ目の苦悩として考えられるのはパーソナルスペースへ踏み込まれることです。
ノーマンは普段は穏やかな人柄でありながら母のことを聞かれるのを頑なに拒絶していました。
マリオンのみならずアーボガストのような男性まで殺した理由はこれです。
ノーマンの一番の苦悩は母というパーソナルスペースを守り続けないといけないことでしょう。
彼の場合はそれを多重人格障害に発展するまでこじらせ過ぎてしまったのですが…。
母の遺体を保存した真意
ノーマンは母の死体だけは墓から掘り起こし、ずっと保存し続けていました。
死体愛好家とも取られかねないその行為の裏にあるものは何なのでしょうか?
剥製趣味
一つ大きな特徴として挙げられるのは剥製趣味があるということです。
ノーマンの場合は鳥しか剥製にしないのですが、何故か母だけは例外的に剥製にしています。
しかし鳥だけならまだしも人間、それも母まで剥製にするというのは異常な性癖です。
まずは剥製趣味によってノーマンが精神異常者であることを表現したいのではないでしょうか。
永遠の象徴
そしてもう一つの意味はキリスト教において骸骨が「永遠」の象徴とされていることです。
母の死体を保存することで、ノーマンはずっと母と一緒に居られるという幻想があったのでしょう。
骸骨は一見不安と恐怖のイメージで見られがちですが、実は普遍の真理の象徴でもあります。
よく儀式やお守り・海賊旗などに髑髏が用いられるのもそういう縁起の良さからです。
ただし、それはノーマンが結局は母にずっと支配された悲しき人間であることを裏付けるのですが…。
観客を騙す仕掛け
犯人が精神異常者であることに説得力を持たせるため数々の仕掛けがなされました。