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吉田修一の原作小説を映画化した「悪人」。妻夫木聡演じる清水祐一が石橋佳乃を殺したことからそれぞれの人間劇が始まります。
幼い頃に母に捨てられ、樹木希林演じる祖母房枝に育てられて来た祐一は悪人とは程遠い人物でした。
しかし出会い系サイトで出会った佳乃と、彼女が想いを寄せる増尾が祐一の運命を狂わせます。
殺人犯になった祐一は深津絵里演じる光代と心を通わせますが、彼は光代との別れを選ぶことに。
今回はそんな「悪人」の、本当の悪人は誰なのか・祐一が光代に手をかけた理由・ラストの光代の言葉の真意に迫まります。
本当の悪人は誰?
犯した罪で悪人かそうでないかを決めるとしたら、殺人を起こした祐一が悪人であることは間違いありません。
しかしこの作品では、「祐一が悪人だ」と言い切れないストーリーになっています。では本当の悪人は誰なのでしょうか。
誰もが悪人になる
直接佳乃の殺害に加担していなくても、増尾は悪人であることは確かです。
彼が車から佳乃を蹴り落としていなければ、祐一が佳乃から罵倒されることもなかったのですから。
そしてもっと遡ると、祐一が幼い頃に母に捨てられていなければ、彼は否定されても佳乃を殺すまでは至らなかったでしょう。
最終的に手を下したのが祐一なだけであって、犯行の舞台は全て他の人が用意していたといえます。
その舞台さえなければ、殺人がなかったのだと考えると、祐一だけを悪人にするのは酷というものです。
光代も悪人か
佳乃殺害に関与していないものの、祐一の自首を引き止めた光代も悪人といえるかもしれません。
その上彼女が祐一と一緒にいたせいで、彼は誘拐と殺人未遂の容疑を追加されることになります。
お互い一緒にいたいと思ったからこその行動でしたが、結果としては犯罪を助長しているのです。
本人の意図しないところで悪人になるケースもあることが分かります。
悪人の定義とは
祖父や近所の老人の通院を手伝っていた祐一はむしろ善人といえる存在でした。
そんな一面をもなかったことにして悪人と呼んでいいのでしょうか。
人間には善も悪も最初から備わっていて、だからこそ悩み苦しむのです。
もしその人の一部分だけ切り取って悪人と呼ぶのなら、祐一が悪人とはいえないでしょう。
「この一瞬は善人だったけど、あの一瞬は悪人だった」というように人はコロコロと善悪を行き来しているにすぎないのだと思われます。
祐一が光代に手をかけた理由
まさか佳乃殺害の次は光代も殺すのかと驚かされた首絞めシーンでしたが、呆然とした光代にキスをした祐一。
彼は何を考え、光代に手をかけたのでしょうか。