本作では彼女の心境の変化はプロセスとして描かれている訳ではありません。

ここでは何故彼女が最後の最後で開店祝いと共に戻ってきたのかを考えてみましょう。

息子からの助言

小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK‐間違った助言や迷信に悩まされないために

明確に示されたのはラウラが最後に漏らした息子からの次の助言でした。

ママに好かれるためなら、僕も嘘をつく

引用:5パーセントの奇跡 ~嘘から始まる素敵な人生~/配給会社:キノフィルムズ

そう、人間誰しも嘘をついて生きており、ましてそれが自分の障害であれば尚更です。

嘘にも二種類あって、相手を騙し傷つけてしまう嘘と傷つけない為の優しい嘘があります。

サリヤがライラについた嘘は後者であり、サリヤは一度もライラを貶める嘘はついていません。

他ならぬ最愛の息子に指摘され、ライラは改めてサリヤの嘘と向き合ったのではないでしょうか。

父の不在と家族思い

キリンの絵 父不在で母さみし

そしてもう一つ、サリヤとラウラには“父の不在と家族思い”という共通点がありました。

サリヤは障害が発覚した途端父に捨てられシーラとダグマーを養わないといけませんでした。

一方のラウラもそれは同じでシングルマザーとして女手一つで息子を養わないといけません。

ラウラは恐らくサリヤに向き合った時、その辺りのこともきちんと考えたのではないでしょうか。

自身がサリヤの目になるとまで言った位ですから、決して気持ちだけで動いたわけではないでしょう。

マックスの根回し

これも直接的に描かれていた訳ではありませんが、マックスがラウラに根回しをしたとも考えられます。

マックスは仕事以外のプライベートでは女の子と見るや即座に口説きにかかるプレイボーイです。

しかし、だからといって他人の恋を邪魔したり横から突然奪ったりするような無神経さはありません。

サリヤがラウラに振られて落ち込んだときにも励ました位ですから、サリヤにもそうしたのでしょう。

そうでなければ、サリヤが話していない店の開店日にラウラがやって来るという奇跡はありえません。

奇跡の裏には常に誰かが陰になって支えてくれ、根回しや段取りが丁寧に行われているからこそなのです。

サリヤの軌跡

サリヤが5つ星ホテルの研修生として障害を抱えながら大成していく軌跡を見ていきましょう。

彼が一流ホテルの合格を蹴るに至るにはどのような道を歩んできたのでしょうか?

仲間達の支え

次世代・仲間たちへの伝言

マックスをはじめサリヤの軌跡を語る上で仲間達の支えは欠かせない要素です。

アフリカ難民の元医者ハミード、人事部長のフリート、料理長のクローンなどよき理解者に恵まれます。

そしてその中でもクラインシュミットの存在は非常に大きかったことでしょう。

厳しい鬼教官でありながら、最後は誰よりもサリヤを高く評価してくれたのです。

サリヤが研修をパス出来たのは彼自身の向上心は勿論何よりも職場の仲間達の支えが欠かせません。

挫折からの再起

大きな転換点となったのがラウラとの破局に伴って起こった様々な挫折でした。

その結果麻薬にまで手を出してしまう様は余りにも痛々しく、人生最大の挫折でしょう。

サリヤはこの時初めて自分を偽り隠し続けることがどれだけ悪いことかを知るのです。

しかしサリヤはこの時初めて改めて本当の自分と向き合う覚悟を決めました。

ピンチはチャンス、サリヤは挫折からの再起にかけて自分自身と真剣に向き合ったのです。

一流ホテルは戦場

民間人のための戦場行動マニュアル:もしも戦争に巻き込まれたらこうやって生きのびる

一流ホテルはその見かけの華やかさに反して裏のキッチンや休憩所などは戦場の如き厳しさです。

サリヤがマックスと共に店を開業するに至ったのはその厳しい職場の日々があってこそでしょう。

もしかしたらサリヤは一流の5つ星ホテル以外でも結果を出し成長したかもしれません。

しかし、この一流ホテルでなければ彼はここまでの大きな成長は見込めなかったことでしょう。