出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01KZ7URQO/?tag=cinema-notes-22
映画64-ロクヨンは当時話題となった前後編二部作として瀬々敬久を監督に迎え2016年に公開されました。
主演の佐藤浩市をはじめとする演技派俳優陣が圧倒的な迫力で観る者の心を震わせます。
日本アカデミー賞で最優秀主演男優賞に佐藤浩市、新人俳優賞に坂口健太郎が選ばれました。
他にも作品賞・監督賞・脚本賞・音楽賞など10部門で受賞した大ヒット日本映画です。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/64/ロクヨン
前半の最後で発生したロクヨン事件の模倣犯の正体とその目的を徹底考察します。
最後にかかった電話の謎、そしてなぜ目崎は泣きながらメモを食べたのかを探っていきましょう。
模倣犯の正体
前編の最後に発生した誘拐事件は明らかに模倣事件です。
県警捜査本部はロクヨンの模倣事件とはすぐに気づきますが、それが狂言誘拐だとまでは県警側も掴んではいませんでした。
模倣犯は2人
幸田が実行犯で雨宮がサポートする形をとっています。
雨宮のサポートは、目崎がドラム缶にたどり着くまでの間にメモとマッチと油を用意することでした。
雨宮の家の仏壇に置かれていたマッチと同じものが一斗缶に入っていたことでわかります。
幸田は目崎の長女を追いながら事件を進めました。
目崎の長女が警察に補導されたのを見て残り時間が少ないことを悟り、立ち寄り場所を3つ飛ばして最終目的地まで誘導しています。
本当に誘拐したわけではないので、いつ気まぐれで家に帰るともわからない危ない計画です。
この『危うい計画』を実行に移した真意は何でしょうか。
目崎が犯人だと特定したのはいつなのか
長い歳月をかけ58万世帯分の電話帳を1軒ずつ確認するという途方もない作業で犯人を突き止めた雨宮は、いつ目崎にたどり着いたのでしょうか。
12月5日に三上が雨宮を訪ねたとき、雨宮の髪はボサボサです。
次に訪ねた8日にはさっぱりと散髪していましたね。
目崎の二女を車に乗せたときの髪は短髪なので、9日に幸田が退職していることから逆算すると6日が有力です。
三上訪問の翌日に目崎だと断定し、翌7日に二女を誘拐しようと試みますが良心の呵責により失敗します。
8日に幸田と会い事の顛末を相談し、狂言誘拐に切り替え幸田が実行することになったのでしょう。
その日の朝に三上が幸田の職場を訪ねていることから幸田は急ぐ必要を感じたはずです。
9日に幸田が退職し、夜に三上を訪ね清々しい心境であることを伝えていることからこの時系列が割り出せます。
10日に目崎の長女を尾行し遂に実行に移すのです。
模倣誘拐事件を起こした真意
雨宮は県警を一切信用していません。
内部告発によって県警を追われた幸田はそれでもまだ警察を信用しています。
そんな二人がたどり着いた答えが『模倣誘拐事件』です。
雨宮の心情
雨宮は目崎が犯人だと特定した後、目崎の家を見に行きます。
大きなスポーツ用品店を見て憎悪を募らせたことでしょう。
そして復讐を誓います。
おそらく登校時の二女に目をつけ、下校時を狙って車に乗せることに成功したのでしょう。
しかし彼には目崎と同じことはできませんでした。
翔子ちゃんの遺体の上にばらまかれていた餅花と彼女の写真が入った袋を二女に渡し泣きます。
おそらく二女を誘拐した後、犯人が自分であることを知らしめるために持っていたものなのでしょう。
しかし誘拐はできず、二女もそれを父親に渡すことはありませんでした。
渡していたとしたら、目崎は雲隠れしたかもしれませんね。
なぜ模倣なのか
幸田と相談した結果、雨宮は目崎の逮捕を目指したのでしょう。
復讐だけならロクヨンを模倣する必要はないのです。
ロクヨンを模倣する手段を選んだ真意は、あの事件はまだ終わっていないことを世間に知らしめることではないでしょうか。
同時に目崎が犯人であることを気づかせ逮捕させるには目崎の自供が絶対条件となります。
目崎を追い詰めるためには、目崎自身が被害者となりあの日を体験するしかないと考えたのです。
実行の前夜、仏壇に向かって妻と娘に無言で語りかける雨宮の背中から満足感は微塵も感じられません。