そして、兄を殺害してしまった次朗の心情と自分が啓二に抱いていた感情がシンクロしたのです。新一朗の遺体を見つけた修一に次朗は話します。
目の前のものを奪いつづけられる気持ちなんてあなたにはわからないでしょう!?
僕が必死に手に入れようとしたものを全部!
引用:影踏み/配給会社:東京テアトル
次朗はなぜ、兄を殺したのか
世の中にも人の手柄を自分の手柄のようにしてうまく立ち回る人はいますが、新一朗がまさにそんな男でした。
しかも弟が努力して得てきたものを兄が横取りするのですから、身近な兄弟にそうされ振り回され続けることは苦痛以外の何ものでもないです。
自分になりすましておきながら久子にふられ殺害を匂わし、金の無心をする新一朗に次朗は積年の恨みが爆発し殺害に至ってしまったのです。
啓二が消えたのはなぜ?
啓二との決別のとき
次朗の本心を啓二の本心と重ね合わせるように、修一は啓二に言うのでした。
奪ったわけじゃない!ほしかったものが同じだっただけだ!
自分が双子の片割れじゃなくて、一人の人間だと証明するために(俺は)あなた(啓二)と戦ったんだ!
引用:影踏み/配給会社:東京テアトル
修一は啓二が死んだことで自分も消えたと感じ、そう感じないために自分の分身ともいえる啓二の幻影を呼び起こしたのでしょう。
また、啓二と同じように泥棒になったのは、法律に対する復讐よりも啓二を失った喪失感が強かったからではないでしょうか。
しかし修一が久能次朗と向き合ったことで、心の中で目を背けてきた啓二への思いと本気で対峙することができたのです。
「でも、修兄…二人で一人にはなれないよ。もう、振り回されるのはこりごりだ…」
引用:影踏み/配給会社:東京テアトル
罪の意識を背負い込んで生きてきたことが一人よがりだと気づいた修一は、啓二という幻影と決別しなければと考えたます。
啓二が消えた理由
啓二もまた死後は修一を振り回し、久子も苦しめてきたと言えるでしょう。
啓二の幻影を消すには久子が修一と幸せに生きていけるかどうかです。啓二の悔いや心残りも消せなければならなかったのです。
「俺は誰にも殺されていないよ。俺は母さんと俺を修兄から奪ったんだ。お互いもう解放しようかねぇ…」
「久子がいなければよかった・・・なんて嘘だよ。ごめんね…」
引用:影踏み/配給会社:東京テアトル
修一が見ていた啓二の姿からは悔いや心残りがなくなり、修一が久子の手を握り新しい人生を歩むと決めた瞬間に啓二の姿が消えたのです。
消せない影と向き合うということ
あなたに兄弟姉妹がいたとしたら、兄弟の持っているもの好きなものを奪ったり奪われたりしたことありませんか?
意地を張って大切な人を傷つけ謝れす疎遠になったり、向き合わないまま悔いを残したことはありませんか?
修一は悲惨な事故で弟と母を亡くし心に深い傷を負ったまま長い年月を生き、啓二の幻影を生み自問自答をし立ち直るきっかけを得ました。