御子が浄化するために住んだ『2K10万円』の部屋の幽霊は犯人が捕まっても成仏せず、むしろ新しい住人が来るのを楽しんでさえいます。
浄化したと考えるのは『生きている側』だけで『死んでいる側』としては誰が住んでもいつまでたっても帳消しになることは無いようですね。
幽霊たちとの関わり
幽霊が見え、幽霊と話しができるのに生きている人間が苦手な御子は『ネクラ定食』ばかり食べています。
御子は自分が持つ特殊な能力を疎ましく思っていますが、それは母方の家系から受け継いだものでした。
その能力によって御子の生きる方向を見つけ出します。
御子の絵が語るもの
御子はイラストレーターになりたかったようですね。
美大にも憧れた様子が垣間見られるシーンもありました。
パンクロッカーの幽霊に会うまでの御子が描いたスケッチは、その部屋にいた幽霊たちの絵でした。
その幽霊の絵を見て幽霊のパンクロッカーが心を痛めるシーンは『笑わせる』仕込みではなく、その後の御子の変化の布石です。
母はなぜ空き地に居るのか
悟朗の話によると母親は施設に行ったとあります。
母親の服装が寝巻ではないので病気といっても精神的なもので、施設とはいえある程度の自由のある集団生活的なものかもしれません。
病衣ではないので病死では無いようです。
自殺だとしたらその場所に縛られるという設定なので、あの自宅跡の空き地で亡くなったのでしょうか。
御子の周りの人々
御子を引き取った祖母の役で渡辺えりが出ています。
役名も『御子の祖母』というチョイ役なのに凄い存在感でしたね。
この映画はチョイ役のキャスト陣が豪華なことも特徴です。
優しい祖母
御子を守り育てた祖母を御子は唯一の肉親だと思って18歳まで育ちました。
その祖母の葬儀に現れたのが叔父の悟朗でした。
御子が知らないということは少なくとも13年以上は実家に帰っていないということですね。
罵りながらも母の言いつけを守り御子を引き取る悟朗もまた心優しい人なのでしょう。
怪しい叔父
御子を引き取りワケアリ物件に住むことで浄化させるアルバイトをさせた悟朗には狙いがあったのだと思われます。
それは雷土家の能力を引き出すことです。
悟郎は御子にワケアリを帳消しにする仕事によって御子に未来を与えます。
帳消しになるのは部屋の履歴ではなく御子の孤独な過去なのです。
泣くな笑え!の意味
家訓となった経緯を深読み
雷土家は代々受け継がれた特殊な能力によって様々な苦労をしてきたのでしょう。
その能力を隠し生きてきたと思われます。
死因にかかわらず死んだときの状態で現れる幽霊が見えるとしたらそれは恐怖です。
子供でなくとも大人でも泣いてしまうかもしれません。
しかし他の人には見えないのですから、幽霊を見たことで怯え泣いてしまったらその能力が露見します。
その結果が『泣くな笑え!』ではないでしょうか。
きっと雷土家の人間に生まれた子供は幼いころから言い聞かされて育つのです。
誰に向けた言葉なのか
雷土家の家訓としては辛く悲しい過去が伺える厳しい言葉です。
しかしこの言葉は家訓としてだけ使われているわけではありません。
『泣くな笑え!』は私たち観る側に投げられているのです。
『後悔先に立たず』
生きている人間よりもいきいきと描かれた幽霊たちが私たちに教えてくれているのです。
泣くくらいなら笑って生きていきなさいと。