出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B085WKCQHB/?tag=cinema-notes-22
映画「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ」は2018年公開の青春映画です。
いわゆるTwitterやInstagram、YoutubeなどSNSが主流となった現代の若者の苦悩を描いています。
監督・脚本のボー・バーナムはYoutube経由で人気者になったという異色の経歴の持ち主です。
また、主演のエルシー・フィッシャーが本作にリアル13歳として出演したことも話題となりました。
「映画の神々からの贈り物」とまで高く評価され、エルシーは以下の賞を受賞しています。
第24回放送映画批評家協会賞新人俳優賞
第28回ゴッサム・インディペンデント映画賞ブレイクスルー演技賞
第18回ニューヨーク映画批評家オンライン賞ブレイクスルー演技賞
第14回ユタ映画批評家協会賞主演女優賞引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/エルシー・フィッシャー
今回はそんな本作でケイラ・デイが最後の動画を撮影した真意を考察していきましょう。
また、タイムカプセルを燃やした理由も併せてネタバレ前提で見ていきます。
デジタル世代の苦悩
本作で特徴的なのは“デジタル世代の苦悩”がケイラを通して描かれているということです。
今やネットのインフルエンサー業で芸能人・スターのように世界へ情報発信が可能となりました。
日本でも「一億総芸能人化」「一億総タレント化」とまでいわれるようになる程です。
しかし、誰もが簡単に芸能人・タレントになれるかというとそういうわけではありません。
どんな世界でも本当に上のステージへ駆け上りスターとなれるのはほんの一握りです。
その陰で数多の人が挫折や失敗を経験しどこかで諦めていきます。
本作で描かれるケイラ・デイのデジタル世代の苦悩とは正にそういう類のものでした。
最後の動画を撮影した真意
Youtuberとしてチャンネルを続けるも全く人気が出ず視聴者もつかないケイラ・デイ。
そんな彼女がラストで撮った最後の動画にはどのような真意が込められていたのでしょうか?
彼女の生い立ちや置かれた環境などを振り返りながらじっくり考察していきましょう。
“背伸び”との訣別
ケイラがYoutuberとして撮っていた動画は全て“偽りの自分自身”でした。
学校で上手く行かず友達も作れず、体型もややふっくらしてて顔にはニキビという中途半端さです。
でも、彼女は誰よりも自分を見てくれていた父マークに認めて貰うことで等身大の自分に戻れました。
もう自分を偽らなくても生きていけるだけの心の強さ・安定を手にしたのです。
最後の動画は正にそんな彼女の偽りの自分、即ち“背伸び”との訣別であるといえます。
中身のまるでない”クール”
ケイラが最も拘りを持ち、本編で多くの登場人物が口にしたのが“クール”(cool)という言葉です。
これは今や世界共通で「イケてる」「格好いい」の象徴として用いられてきました。
日本でもかつてクールジャパンという日本の魅力を世界に訴える戦略がありましたが、失敗しています。
何故かというと”クール”自体はあくまでも結果であってそれ自体は目的にはならないからです。
そのように見ていくとき、ケイラの口にするクールという言葉がどれだけ中身がなく空虚なことか。
クールとは自分の哲学なり考えなりがしっかりあって、それを洗練された振る舞いに出来てこそです。
足下の日常生活レベルで苦戦しているケイラはその意味で最もクールから遠い人間ではないでしょうか。
“Be Yourself”の重み
そんな最もクールから遠かったケイラがなぜ強さを手にすることが出来たのか?
それは父マークとの話の中で出てきた“Be Yourself”という言葉に全てが込められています。