女性らしさを追い求めるララは日に日にストレスを募らせます。彼女を襲うストレスとは具体的にどのようなものだったのでしょうか。
生きていることがストレス
人間は生きている間、絶え間なくストレスに晒されています。仕事・家庭・友人など色々な環境の中で、その悩みは尽きません。
そしてそんなよくある悩みに加えて、トランスジェンダーならではのストレスをララは抱えていたようです。
鏡に映る男
バレエを練習するには、全身を鏡に映す必要があります。美を追求するには頭のてっぺんから爪先までチェックしなければならないのです。
その行為はララにとって苦痛の連続だったでしょう。どんなに男性の形を隠しても、骨格は変えようがないのですから。
見たくないのに見なければならない。見なければバレエはできない。
このジレンマが彼女にのしかかる大きなストレスになったことは間違いありません。
積み重なる「なぜ」
朝目覚めたら女性の身体になっていないだろうか。そんなありえない望みすらもララは持っていたのではないでしょうか。
毎朝見る自分の姿は、より男性に近づいている。その度に「なぜ自分は女じゃないのか」という思いに駆られていたと考えられます。
なぜ友達は心も身体も女性なのに、自分だけ男の身体なのか。
なぜ自分だけこんなにも苦しまなければならないのか。
なぜ神様は人に平等じゃないのか。なぜ私は生まれたのか。
「なぜ」が積み重なって、ララの精神は崩壊したのだと考えられます。
またこれらのストレス以外にも、ララを追い詰める原因がありました。
それは彼女を支えているはずの周囲の人々、そして彼女自身だったのです。
追い詰められた原因
周囲の支えもあり、トランスジェンダーとしては恵まれた環境にララはいたように見えます。
しかしそんな支えの甲斐なく彼女は性器を切り落としてしまいました。ララをこれほど追い詰めた原因とは何だったのでしょうか。
周囲の支え
父も主治医もバレエの仲間もララを理解して受け入れ態勢が整っていました。
しかしこの周囲の支えが逆にララを追い詰める原因にもなっていたのではないでしょうか。
バレエのロッカーはどうするのか、シャワーは同じ場所を使うのか。そんな論議をララ以外の人達がして決めるのです。
これ自体彼女にしてみれば「自分とその他」に区別されていると感じていたのでしょう。
トランスジェンダーのララと、普通の人である仲間や父たち。同じ人間なのに同じ土俵に立たせてもらっていないという疎外感。
周りがララのことを考えれば考えるほど、ララとの溝が深まるのです。
内なる葛藤
ララを追い詰めた原因は外的要因だけではありません。彼女自身の中にもありました。
筋肉質になる身体・ホルモン注射の影響など、周りの人にはどうしようもない問題。
誰も責めることができない苦しみほど本人を追い詰めるものはありません。
せめて父や主治医や仲間に怒りの矛先を向けることができたら、彼女の心は多少落ち着いたでしょう。
ですが周りの人はララを受け入れているのですから、それさえも許されないのです。
はけ口の無い苦しみはどうやって癒すのが正解なのでしょうか。
ララはこれほどまでに追い詰められてもなお「大丈夫」と答えます。なぜ彼女はこの言葉を使うのでしょか。
「大丈夫」と答える理由
父がララを気遣って声を掛けても、ララは「大丈夫」と答えるだけ。何の解決策も生み出さないこの答えに、父の焦りが募るのは当然です。
しかしララにはこの答えしか出せない理由があったように見えます。その理由とは一体何だったのでしょうか。