そして人からお金を貸して貰えるかどうかも全ては普段の人間性から生じる信用なのです。
瑤泉院は本作における財務省として描かれており、金の亡者ではありませんがしっかり者です。
その視点が一貫していることが本作をただのビジネス系コメディ時代劇に留めていない所以でしょう。
お金とは「持つ」ものではなく「預かる」もの
内蔵助と瑤泉院で決定的に違ったのはお金を「持つ」か「預かる」かという感覚の違いです。
それは前半の飲食に金がかかる所で内蔵助がお金を取り返してきた時に現われます。
内蔵助はこの時取り返したお金を懐に入れようとし、瑤泉院は内蔵助だったことに驚きました。
瑤泉院の内蔵助に対する信用のなさがよく出ていますが、内蔵助は金を所有物と思っているのです。
本来お金とは信用を金融機関が預かっているに過ぎず、「預金」なのはそういう意味になります。
瑤泉院はその感覚がしっかりあるからお金に惑わされないし所有しているという勘違いもありません。
寧ろそんな内蔵助の性格を理解した上でよく最後まで付き合い続けたものです。
内蔵助が息子に漏らした理由
内蔵助はかように金遣いの荒い人物として描かれていますが、それが対人面でも出ています。
彼は何とずっと隠し続けていた筈の討ち入りを息子・主税に漏らしてしまうのです。
その結果事態を悪化させてしまうのですが、何故そんなことをしてしまったのでしょうか?
隠し事の出来ない性格だった
一番の理由は本作における大石内蔵助自体が隠し事の出来ない性格だからではないでしょうか。
金銭感覚のおかしさも含め、内蔵助は秘め事・隠し事に向いている性格ではありません。
だから遊郭も討ち入りを怪しまれない為だったのに迂闊に漏らしてしまったのです。
そもそも内蔵助自体矢頭長助や瑤泉院、妻の理玖に支えて貰って初めて最善の動きが出来ます。
自身の金銭感覚すらもしっかり管理できない者が策を用いての行動など不可能です。
息子に示しがつかないから
二つ目の理由としては自身が放蕩してばかりの情けない父だと思われたくなかったからでしょう。
元々芸者遊びが好きだったこともあって、妻からも息子からも飽きられている所がありました。
だから遊びではなく任務の一環だということを分かって欲しかったのではないでしょうか。
結果としては主税も主税で隠し事が出来ないばかりに大声で漏らしてしまい台無しですが…。
だから、父親としてせめてものけじめというものがあるとしたかったのでしょう。
自分の子が生まれて上機嫌
三つ目の理由は主税からもう一人の子供が生まれたと聞いて舞い上がり気分が高揚したからです。
只でさえ遊郭で気分を良くしている所に子供が生まれたとなればそれは盛り上がって当然でしょう。
しかし、矢頭なり瑤泉院なりが居ればうっかりの情報漏洩を阻止できたはずです。
そしてもっともらしいことをいって主税を上手く丸め込むことが出来たのではないでしょうか。
こういう所に内蔵助という人間のだらしなさがよく現われています。
赤穂浪士の心情
さて、そんな内蔵助のだらしなさに振り回されている一番の被害者は赤穂藩でしょう。